プルシェンコ<偉大なるラフと偉大なネイサン(下)>
北京オリンピックでハニュウに三連覇してほしいと強く思っていた。現実的なことだった。直前に彼を襲った怪我がそれを妨げた。やはり10年間トップに居続けて何事もないわけがない。身体は鉄ではないのだ。もし健康上の問題がなければユヅルは今でも、4回転ルッツも4回転ループも跳んでいたに違いない。
ルッツ、ループなしで何とか得点を稼ぐために彼はリスクを冒し、フリーで4回転アクセルを跳んでみせた。これが間違いだったと思う。これでハニュウは銅メダルを失った。
ジャンプがうまく行かないなら、その準備ができていないということ。それを何のためにプログラムに入れるのか?! 4回転アクセルは膨大な力を消費するというのに! 私は知っている、かつてミーシンとこのジャンプを練習していたから…
いちばん重要なのは、ハニュウにこのジャンプは基本的に必要なかったということ! クリーンな滑りで、トウループ2本、サルコウ1本、計3本の4回転と、トリプルアクセルを2本をやれば銅メダルだった。ウノはフリーで輝かなかったではないか。
ショートプログラムでもがっかりした。4回転サルコウの失敗があった。ハニュウがあんなミスをするのを見たことがない。後で本人がインタビューで次にように語っていた。「サルコウがすっぽ抜けたのは氷の穴にはまったから」
十分ありえることだ。そしていちばん残念なことだ。なぜなら選手はジャンプに入る前、氷のどこに傷があるか見えるはずだから。私もいちどグランプリ・シリーズの大会で溝にはまった。同じく4回転の着氷時だった。1本目のジャンプは、穴がないか毎回チェックできる。それ以降は氷の状態の判断が難しくなってしまうため、チェックは不可能だ。
ロシア男子に関して言えば、彼らにとってすべて予想通りの結果だった。私は過去のコラムで「6位以内に入れば大勝利だろう」と書いた。それは実現しなかった。
ロシア人最高位はエフゲニー・セメネンコで、最終順位は8位。トウループで転倒したが、全体には何の影響もなかった。まあ、1つか2つ順位が上がっていたかもしれないが、それ以上ではない。
マルク・コンドラチュクは北京で貴重な経験を得た。団体戦金メダルは素晴らしい。だが成長する必要があるし、全種類の4回転を学ぶ必要がある。サルコウとトウループではもはや不十分で、中身を強化しなければならない。
マルクは団体戦に出て個人戦のときには力が足りなくなっていた、と言う人がいる。私もハードなことだと理解できる。しかし、18歳なら平気でフリーを10回は滑れる!
ちなみに、チェンもハニュウも、大事な試合の前のトレーニングではフリーを5回続けて通しで滑る! 一方、ロシア男子は私の知る限り、最大でも通すのは1回だ。もしくは部分部分を滑る。力を節約しているのだ。だが何のために? 近年この競技は非常にレベルが上がって難度が高くなり、プログラムを滑りに滑り込む必要があるというのに!
総括すると、ロシア男子がすべての面で成長するべき時が来ている。滑り、プレゼンテーション、ジャンプ。新しい4回転を習得することが不可欠だ。高い得点をもたらすルッツとフリップを。それに加えてスケーティング、イメージの解釈。軽やかさ! プログラムは一息で滑っているように見えるべきであり、ハードで疲れる仕事と感じさせてはいけないのだ。
(了)
- 関連記事
-
- プルシェンコ<偉大なるラフと偉大なネイサン(下)> (2022/02/19)
- プルシェンコ<偉大なるラフと偉大なネイサン(上)> (2022/02/14)
- プルシェンコ<来季は僕とヤグディンの合意を取りつければいい> (2019/01/28)
- プルシェンコ<僕とヤグディンが世界選手権へ行くべき> (2019/01/27)
- プルシェンコ<フィギュアスケートは究極のスポーツになった> (2017/04/08)