アルトゥニアン<ザギトワのどこがハニュウに及ばないというのか?(1)>
2019年12月30日
エカチェリーナ・ベスパロワ
<原文>
https://www.sport-express.ru/figure-skating/reviews/chto-dumaet-rafael-arutyunyan-ob-aline-zagitovoy-i-rossiyskom-figurnom-katanii-1627664/
ザギトワのどこがハニュウに及ばないというのか?
有名コーチの大型インタビュー:ザギトワ、トゥルソワ、コストルナヤ、年齢制限、採点について

(前文略)
アルトゥニアンコーチに話を聞いたのは、グランプリファイナル女子フリープログラムの前日。つまりアリーナ・ザギトワがよい演技をできずキャリアを一時停止する前であり、続いてエテリ・トゥトベリーゼ、タチヤナ・タラソワ、エフゲニー・プルシェンコによる三つ巴のスキャンダルが起こる前だ。まるで氏はその後の事件の進展を予見していたかのようだ。
《伝説的指導者》
トリノの前にチェンが2週間こちらへ来て、彼をトレーニングすることができました。するとこの結果です。それに、これだけの期間があると、選手のコンディションをまさに整えることができました。絞ったレモンのような状態へ陥らせることなくね。つまり、選手がコーチのために頑張って、あるべき時よりも早く全力を出すと、試合では完全に荒廃してしまうのです。だからこそ昨年、ネイサンが複数の大きな大会の1週間前に私のところへ来たいと言ったとき、「必要ない。来なくていい」と答えたのです。最初はむっとした様子でしたが、後になってそれが正しかったと理解すると、「どうやってそんなことがわかるんですか?」と聞いてきたほどです。どうやってって、だてに45年もこの仕事をしているわけではありませんよね?
それに指導者も良かった。タチヤナ・アナトリエヴナ・タラソワに、アレクセイ・ニコラエヴィチ・ミーシンに、ガリーナ・ズミエフスカヤの隣でも働きました。私は彼らと同じ空気を吸うだけでうれしかったのですよ、わかりますか? 今もし大会でミーシンかタラソワが私の横を通り過ぎたら、私は立ち止まります。近寄って来ればあいさつします。来なければ私の方から邪魔することはありません。
― 今シーズン、あなたの生徒でもう1人、とても良い印象を残した選手がいます。アメリカの23歳、マライア・ベルのことですが、グランプリ・モスクワ大会で3位に入りました。
ええ、とても良いでしょ! つまり、私はやっぱり何かできるということですね(微笑)。悔しいなと思うのは、私の名前から連想されるのがアメリカ女子や、アメリカのスケートばかりのときです。私の合宿にはかつて全盛期のマリヤ・ソツコワが来たし、ミーシャ・コリャダが来たし、この夏にはクセニヤ・シニツィナがコーチと一緒にやって来ました。私はまるで、誰もが助けを求めることのできる医者のようです。だからシニアの選手と仕事をすることが多いのでしょう。彼らの多くがどこかでトレーニングしてきて、無為に時を過ごして、やがて「引退すべきか、滑り続けるべきか」というジレンマに陥る。そして私のグループへやって来るわけです。確かに、本当の結果はかなり長く待つことになりますが。2年が最低限で、4年あればなお良いですね。
《賢い人間は自分で自分をトレーニングできるはず》
― 生徒たちは待つ準備ができているのですか。その分のパワーと資金源は見つかっていますか。
人それぞれです。いちばん大きな問題は、スケーターが受け取れる以上のものを与えることはできないということ。選手たちから「なぜ全部いっぺんに言ってくれないのか?」と聞かれます。ええ、なぜなら、3~4年経ってやっと理解できることがあるからです。私たちはこの道をアシュリー・ワグナーとも、アダム・リッポンとも、当のベルとも、ミーシャ・ブレジナとも通りました。ネイサンは10歳で私のところへ来たのですが、彼には14~15歳ぐらいまでトレーニング方法を教えました。私が選手を終始トレーニングすることはできません。なぜか? それは、1日3時間分のコーチ料を支払う余裕は誰にもないからです。500ドルぐらいになりますからね! だから私は自分で学び、自分でトレーニングすることを教えるのです。賢い人間ならそれができるはず。そのおかげでチェンは、自分ひとりでトレーニングしているわけです。
―なるほど、確かにエフゲニア・メドベージェワはブライアン・オーサーのいないCSKAでトレーニングしていたし、その後はサンクトペテルブルクで、それにトロントでも彼がいないときは…
それは単純な理由からです。私はロシアでは1日3時間、スケーターをトレーニングすることができました。トップ選手1人と、それに追いつこうとする他の選手たちのグループがありました。アメリカのシステムはロシアと違って、個人レッスンです。スケーターから「今日は30分のトレーニングに必要なお金がなくて、20分ぶんしかありません」と言われるかもしれません。じゃあ、どうするか? ちなみに明日もその生徒にはお金がない。こういう状況での出口はたったひとつ。彼にトレーニング方法を教えることです。3~4年一緒にやっている選手たちには基本的にレッスンをせず、ただコントロールするだけです。あまり賢くない者は「僕をトレーニングするのをやめた!」と言ってふてくされます。でも私はぜんぶ見ているのです。それぞれの動き、ジャンプ、出入り、あらゆるプロセスを。その後でそばへ寄って行って、不十分な点について話します。
こちらが要求することを実行するなら、選手は進歩します。ただ、私が何かほかのやり方を模索することもあります。たとえば、アシスタントを通じて考えを伝えると、スケーターの頭の中で本物の爆発が起こるのです。「うわ、同時に2人から同じことを言われた!」とね。本来、これは心理的なトリック。似たような手を使っていたのがロシアの著名なコーチ、スタニスラフ・ズークです。彼は選手たちをトライアウトに招き、彼らに課題を与え、そして電話がかかってきたかのように見せかけてリンクを出て、自分のいない間に誰がどのように取り組んでいるかを観察していました。そして、正しく課題をやらなかった者はあっさり落選でした。
(つづく)
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