ヤグディン<バカ騒ぎを起こしているのは不健康な人間(3)>
― 女子がいつか4回転ジャンプを跳ぶようになると思っていましたか?
いや、男子も5回転を跳ぶようになりますよ。ちょうど15年後ぐらいだと思います。4回転アクセルは100%実現するでしょう。その昔、2回転ジャンプでみんなが「ワオ!」と思ったようなものです。進歩の流れは止まりません。新しい靴や、もっと軽い合金のブレードが現れます。
人間そのものも進化しています。なぜ今これほどの飛躍が見られるのか? それは、4回転トゥループを目にしている選手たちが、頭の中ではもうその練習をしているからです。彼らが出発点としているのは存在しているものであって、存在する可能性があるものではないのです。
今では皆がすでに新採点システムに適応し、力の配分を習得しています。最初の頃はいろんなステップや様々なスピンを考案するのに、誰もが言うまでもなく息切れしていましたからね。
今、アルトゥール・ドミトリエフJr.が4回転アクセルを試していて、降りているようです。他にも、3回転ルッツ‐逆の足で着地‐そこからフリップというコンビネーションまで跳んでいます。新しいジャンプを考案できるなんて思ってもみませんでしたよ。でも、これは完全に新しいものです。ハニュウにも、4回転トゥループを降りてただちにトリプルアクセルというジャンプがありますね。進化は止まらないものなんです。
― あなたは次のように言っていました。「ザギトワにはリプニツカヤやソトニコワと同じ道を繰り返すことなく、少なくとも4年間は持ちこたえてほしい」と。今や彼女への信頼は高まりましたか?
彼女ならすでに繰り返していませんよ。3人は同い年でした。そしてアリーナはすでに2年間、堅持しています。ついでに言うと、彼女は完全にすべての大会で優勝して「グランド・スラム」-僕がそう呼んでいるんですが-を達成した初めての女子選手のようですね。
そして、この先は……彼女がどんな人間か、人生で何を望んでいるかを僕は知っているので、事がこれからどう展開していくのかとても興味があります。でも、人生とフィギュアスケートについての彼女の考えを知っているので、世界選手権での勝利を見られて、僕はすでに誇らしく思っています。
― 2022年のオリンピックまでの道は、メドベージェワ対ザギトワの旗の下に進むでしょうか?
まず第一に、ロシアのスーパージュニアたちがすでに登場しています。トゥルソワに、シチェルバコワに、コストルナヤ。
それに加えて、世界選手権では完成しなかったにすぎない日本選手たちが残っています。彼女たちとの戦いも非常に難しいものになるでしょう。
さらにトゥルシンバエワもいます。彼女のこともずっと前から知っています。だって、ずっと前から世界選手権に出ていますからね。今回のあの彼女とも戦うことになります。
またさらに、アメリカ選手権を制した13歳、アリッサ・リュウがいます。彼女はトリプルアクセルと4回転ルッツを武器として持っています。
それから……さらに誰が出てくるか、誰にもわかりませんよね? 時は刻々と過ぎていき、僕たちはそれをどうすることもできません。さらに若い選手たちが出てきて、彼らの方がちょっといいジャンプやスピンをするれど、自分はどんどん悪くなっていく。それが人生です。フィギュアスケートでは多くの選手たちが「もうすぐだ、今にできる」と思いながら最後まで持ちこたえようとしますが、時は過ぎていきます。幸運に恵まれる人もいれば、あまりそうでない人もいます。
僕にはわかります、ジェーニャにとってオリンピックの銀メダルは悲劇だったということが。それがとてもよくわかるんです。僕も、たとえば世界選手権で2位になったり、ヨーロッパ選手権で2位になったりしました。とても凄いことのように思われるでしょうが、表彰式に出ることさえできませんでした。タラソワに叩かれて、「行くわよ!」と言われました。どうやってこんなふうに負けたのか、僕には理解できなかった。
ジェーニャだって2年間フィギュアスケート界をけん引してきたのに、オリンピックではアリーナに負けてしまいました。そして今度は、若い選手たちもそうなります。年齢からはどこへも逃げられません。年々、難しくなる一方なのです。
(つづく)
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