ソトニコワ<みんなに忘れられて成長できた(4)>
― ところで、アデリナ、女友だちはいますか?
クシューシャ・ポノマリョワとナスチャ・シュムコワ。同級生です。元フィギュアスケート選手と元体操選手で、二人とも“元”です。クラスの他の子たちと違って本格的にスポーツをやっていたから、それでお互いに引き寄せられたのかも。ええ、私は飛び級で卒業して体育大学に入って、二人はまだ最終学年にいるんですけどね。ソチが終わってから会ってもいないんです。どうしても時間がとれなくて。彼女たちはきっと怒ってるでしょうね。でも私のせいじゃなくて、まったくどうすることもできなくて…
― ちなみに、クシューシャとナスチャを”元”選手と呼ぶのは何故ですか?
二人はレースを棄権して、トレーニングをやめて、競技を諦めたからです。そういうスケジュールで毎年毎年やっていくのは大変なこと。私だってやっと2011年にレニングラード大通りへ引っ越してきたんです。フィギュアスケート連盟がもう少しリンクに近い場所にアパートメントを借り上げてくれたときです。それまでは毎朝6時頃か7時より前には起きて、パパと一緒にビリュレヴォを出発していました。8時までに学校に着くようにね。授業の後はトレーニング、昼食、振付、それから少し休憩があって、その間に宿題をやって、その後2回目のトレーニング。なんとか生きて家にたどり着くのは7時頃。そんな生活が毎日毎日、毎週毎週、毎月毎月…
― 同級生のみんなはあなたにどんな態度を?
すごく仲良くしていたとは言えません。いいえ、ケンカがあったわけじゃありません。というより、みんな私とどう付き合えばいいのか分からなくて、私の人生に入り込めなかったんです。だってごく一般的な普通教育の学校で、スポーツ学校じゃなかったし。だから、ちょっと頭のおかしいヤツみたいに見られてました。私はいつもどこかへ走って行ってたし。トレーニングとか、試合とかへ。何もすることがなくてぶらぶらしたり、ほかの子たちとうろうろすることなんて全くできませんでした。
― 学校では、たとえば、あなたが五輪までにすでにロシア選手権で4度も優勝していることが、授業に出てきたりしましたか?
いいえ。特に誰にも言わなかったし。耳にした人は知っていたでしょうね。だいたい何のために自慢しなくちゃいけないの?優勝したんだから、それでいいわ。
― 妹さんのことも話していなかったのですか?
身近な友だちにだけ。その子たちはマーシカに会っています。それ以外の子は私たちの生活とは関係ありません。みんなそれぞれ自分の道を歩くのだし…もし妹がいなかったら、もしかすると、私もとっくの昔に何もかも投げ出していたかもしれません。自分には才能があって、結果を出すことができて、それが家族にとって重要だということが分かっていました。13歳で自分を一家の稼ぎ手と感じるのは嬉しいことです。両親は私を誇りにしていたし、私はそのことを知っていました。
その反面、疲れがたまって、もう何もしたくありませんでした。競技をやめる考えが何度か浮かんで。ママとパパはプレッシャーをかけたりせず、私に決断をまかせてくれました。去年の秋にもやめることを考えていたんです。シーズンに向けて精神的な準備ができなくて、何もかもがかろうじて過ぎて行くだけで。
ある時、ついかっとなって、ぶちまけてしまいそうになったんです。「こんなこと、やめてやる!」って。もし必要なコンディションに持って行けないなら、何のために苦しまなくちゃいけないの?オリンピックにはたくさんの才能豊かな女の子たちが選抜されてきているし、あんな滑りではロシア代表チームに入ることもできなかったでしょう。それから徐々に頭を整理しました。良い人たちに出会って、助けられて…
(つづく)
<自習メモ>
ма'лость=(俗) немного, чуть-чуть
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