ズエワ<メリルはシェヘラザード姫(5・完)>
イリニフ/カツァラポフ組の名前がちらっと出てきますが、インタビューが行われたのがソチなので、この時点でニキータからズエワコーチへのアプローチはまだないと思われます。
五輪優勝が最終目標ではない
― あなたが育てた2組のチャンピオンは非常にプロフェッショナルです。バンクーバーでは1組が1位、もう1組が2位で、次の五輪では1位が2位に、2位が1位になっています。にも関わらず、彼らは互いの友情を見せ、あなたはその彼らに挟まれてコーチをしています。爆発するかもしれないある種の境界線があるでしょうに。
言うまでもないわ。でも、たとえその境界線がどこかで爆発したとしても…ねえ、勝った人間は何も爆発することはないのよ。テッサとスコットの方が大変なの。
― 何が大変なのですか?
道を譲ることよ。でも、私はこの仕事に対する態度として、自分にできることをすべてやったわ。もし私が受け持つのがテッサ/スコット組ひとつだったとしても、プログラムはまったく同じようになっていた。準備も同じようにしていたわ。だって二人の準備は、メリルとチャーリーの準備とは何の関係もないもの。彼らは同じリンクで、同じ時間に練習しているけれど、私は彼らと一緒には仕事しないの。
ここで重要になるのが、さっきあれこれお話ししたまさに規律よ。彼らは生理的・肉体的特徴がまたく異なっているわ。いま私が願うことはただひとつ。テッサとスコットが自分たちのキャリアに対する誇りと、2度目の五輪でフィギュアスケートの最もハイレベルなものを披露したという喜びの感情を持ち続けてほしいということね。
― 二人は現役を続行できますか?
滑ることはできるわ。ええ、テッサには怪我があったけれど…スポーツでさらに何かやりたいと二人が感じることが必要。もしそれを感じられないなら、おそらく引退ということになるでしょう。でも、どちらのカップルとも次のオリンピックに向けた話はしていないわ。
― でも、デーヴィス/ホワイト組にとっては、すべてが始まったばかりですよね。
彼らが今しなくてはいけないのは、ソチでやったことを認識して、さらにやりたい、それができると感じること。彼ら自身に力があれば滑り続けるでしょう。
― 2014年のオリンピック銅メダリスト、イリニフ/カツァラポフ組は、あなたの2つのペアには遠く及びませんでしたか?
わからないわ。問題は、私の見解が正確かどうかではなく、彼らを試合でしか見ていないということ。試合では成功したことしか見えない。練習では何もかもずっとうまく出来ていることがあるの。それとは逆のカップルもいるし。
― 我が国のオリンピアン達は、五輪の結果に人生の意味を見ていることがありますが。
それはコーチ次第ね。私にとっては勝つことが最終目標じゃない。最終目標は自己完成よ。それを選手たちに分からせようとしているの。
― 優秀なコーチ達は皆そう考えています。
自分のやっていることに真剣に愛を持って取り組めば、そういうファイトがそういうコンディションを見出す。みんなが、あなたも含めて「Wow!」と叫ぶわ。そして全てがひとりでに終わるの。1位でね。
― ヴァレリー・ロバノフスキー(※サッカーの元ウクライナ代表・ソ連代表監督。ディナモ・キエフの監督を20年近く務めた)がディナモ・キエフに同じようなことを説明していました。するとチームは「ヴァレリー・ワシリエヴィチ、もし僕たちが勝てなかったら?」という反応でした。これは、ランキング表の上での順位を考えないという新しい発想を、誰も理解しないだろうと考えてのことです。
ええ、よくあることじゃないわ。それは確かね。
― そうですね、あなたとは環境も違うし、国も違いますね。
ええ、何もかも違うわ。私たちのフィギュアスケート競技でも試合後、すべてが明瞭というわけにはいかないことがある。なぜこのカップルがこの成績で、あのカップルは違うのかとね。全員がクリーンに滑っても、誰かが1位で誰かが2位なのよ。
― 他のカップルの演技を見るのは楽しいですか?
とてもたくさんのカップルに楽しませてもらってるわ、見る機会があればね。でも、おかげさまで、最近はそういう機会がないの。だって私たちはいつも最後に登場して、いつも優勝しているもの。4年後の平昌でもこの状況が続くといいわね。
(おわり)
<自習メモ>
донести ~まで運ぶ→分からせる、理解させる
турни'рная табли'ца トーナメント表、ランキング表
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