ズエワ<メリルはシェヘラザード姫(3)>
― デーヴィス&ホワイト組のスタイルはあなたが作りましたが、誰かのスタイルを壊さなくてはならないことはありましたか?
できあがったチャンピオンが来たことは一度もないの。私がやっているのは、子どもを生徒に取って、その子たちがどう成長するかを見ること。タカヒコ、シボーン、メリル、チャーリー、テッサ、スコット…
― みんな子どもの頃からですね。トータルとして土台がしっかりしています。
成熟した選手たちは振付にやって来る。中国のペアにはとてもたくさん振り付けたわ。私のグループにクリスとクリスティ・ウィルツというペア(※元カナダチャンピオン。長野五輪12位。現役中に結婚)がいてね。クリスもクリスティもクリスの弟のコーチをしていたの。
― 早口言葉そのものですね。
クリス本人は現在、カーステン・ムーア=タワーズ/ディラン・モスコヴィッチ組のコーチをしている。ソチオリンピックで5位になったペアのね。自分の生徒がコーチになって、成功を収めたことをとても誇らく思うわ。それに彼はみんなに、私のところで多くのものを得たと話しているの。こういうコンタクトがあるのは幸せね。
ウィルツは自分の弟のポールのコーチをしていて、私はその振付師だったのだけれど、何かのときにポールからペアを完全に引き取ってほしいと頼まれたの。兄が弟をコーチするのは難しいと言ってね。それで兄は、弟とその妻を私に引き渡し、気がつくと3年間その二人のメインコーチをやっていたわ。
― 成熟したペアのコーチになったわけですね。徹底的に二人を変えたりしなかったのですか?
変える?いいえ、二人にとってもっとも調和のとれたスタイルを見つけただけよ。でも、彼らの愛する動きはちゃんと入ってる。ここに選手のコーチに対する愛のキーポイントがあるのよ。それに、私は音楽に決して固執せず、提案に提案を重ねるの。(※よく分からないので一文飛ばします)。だって音楽を押しつけるのは危険だもの。演じる人間が動きを感じることができなければ、練習がつまらないでしょ。私の方もそんな状況でプログラムをつくるのはつまらないし。
― いつそんなことがあったのですか?
一度もないわ。
― デーヴィス/ホワイト組とヴァーチュー/モイア組に、提案した音楽を断られたことは?
そういうケースはあったわね。ちなみに、私が音楽を用意して、アイデアを形にして、それを氷上に置いて、ヴァーチュー/モイア組を見てみると…プログラムが見えないということもあった。自分で否決したわ。何度もね!自分のアイデアに見切りをつけたの。
― どんな規準で?
規準はひとつ、氷上でどう見えるか。明快よ。うまく行くかどうかすぐに分かるわ。女性が服を着ると、似合っているどうかすぐに分かるでしょ?
― いつもとは限りません。
あら、いつもに決まってるわ!あなたがジャケットを着たら、それが似合っているかどうか分かるでしょ。それとも、あなたは何でも似合うの?
― ええっと…コーディネート次第かと。
オーケー、コーディネート次第というのは正しいわ。でもね、“ぴったり”させるためには、さらに何かをはめ込む必要があるでしょ。あるいはサイズを変えたり。女性の場合は少し違うけれど、アイスダンスでは、見え方がもう少し鋭く求められるの。
ねえ、プログラム終盤でチャーリーのスピードが上がると、まるで100メートル走みたいでしょ?観客もその瞬間、座っているのではなく彼と一緒に走っているの。鮮やかに、エモーショナルにね!これが心をとらえるの。そう、これがその規準よ。チャーリーがそれを誰よりもうまくやるところが、私には見えたわけ。
― そうですね、走る必要のない人もいますね。
基本的に走らない方がいい人もいるわ。
― 腕を振り上げる方がいいですね。
あるいはパートナーを見つめるとかね。
(つづく)
<自習メモ>
потому как=(口)потому что
ставить крест на 見限る、あきらめる
сидеть <衣服が>(体に)合っている
Этот костюм очень хорошо сидит на вас.
вИдение ヴィジョン/見る(見える)こと、視力
видЕние イメージ/幻、夢/幽霊
стометровка 100メートル走
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