ミーシン<膝をすりむきながら目的地へ這い進め>
2013年10月6日
エレーナ・ヴァイツェホフスカヤ
膝をすりむきながら、目的地へと這い進まねばならない
(略:フィンランディア杯を初戦に選んだのはサンクトから近いから、等)
― ガチンスキーは今シーズン、グランプリシリーズに1試合のみのエントリーです。2試合目に出場できる可能性はありますか?
アルトゥールのような選手なら、どんな大会にでも喜んで参加するに違いない。しかし、我々には選ぶ権利がそれほどないのが問題だ。もしガチンスキーがアメリカで良い演技をすれば、それによってモスクワのロシア杯に追加エントリーされるかもしれない。モスクワ杯へのエントリーは今のところエフゲーニー・プルシェンコとマクシム・コフトゥンの2人だけで、我が国がホスト国として持っている3枠目は空いたままだ。
しかし、アルトゥールはアメリカで本物の「死のグループ」に入っている。リーザも同じだ。男子シングルの出場選手はアメリカ人が2人、日本人が3人、デニス・テンに、ブライアン・ジュベールに…そしてトゥクタミシェワの方はマオ・アサダやアシュリー・ワグナーと戦わねばならず…押し並べて簡単ではない状況だ。その一方で、私は常にとても簡単な哲学に従っている。「真剣な計画があるなら闘え!」だ。
― 大会開幕までにしっかり時差や気候に慣れようと、我が国の多くの選手が今年は早めにアメリカ入りしますね。あなたのチームではどのような計画ですか。
我々は試合直前に行く。早めに発つ時間が単純にない。私とリーザとアルトゥールがヘルシンキから戻るのが10月7日で、17日にはもうグランプリが始まるのだから。
― フィンランドであなたの生徒たちが滑るプログラムはフルバージョンですか、それとも負荷を軽くしたものですか。
リーザはほぼフルの力で滑るだろう。アルトゥールに関しては、フリープログラムは敢えて軽いバージョンで行く。穏やかに、それでいて最大限に質の高い滑りができるようにするためだ。というのは、ガチンスキーは身体の成長段階で非常に苦労しているのだ。過程が1段階で終わる選手もいる。その場合は、アルトゥールのようにそれが2段階あって、続いて起こる場合にくらべて幾分簡単に身長の問題をクリアできるのだが。
この青年は信じられないほど才能豊かだが、私は次のように理解している。本当の安定感が得られないうちは、良い結果を出せるかもしれないし、すとんと下へ、しかも深いところへ落ちるかもしれないものだと。こうした落下は避けたかったのだが。
(略:ロシアのフィギュアスケート学校の現状等)
― ご自身のグループの準備体制に満足していますか。それとも、スポーツの指導的機構の側から、もっとサポートや配慮がほしいとお考えですか。
私のコーチ人生の中でフィギュアスケート選手が今ほど配慮されたことはなかったと、率直に言うことができる。以前は、音楽のミキサーや振付師や衣装など、すべての報酬が完全に支払われることなど望むべくもなかった。選手が結果を出すためにこれ以上どんな環境をつくる必要があるのか、私には想像がつかないほどだ。しかし、スポーツにおける結果というものは、環境というよりもむしろ選手自身のファイトにかかっており…
最近、シンクロナイズドスイミングで何度も五輪を制しているある選手が、「いったん引退して競技に復帰するのは自己犠牲的行為」と話していた。私もまったく同感だ。そして、復帰は強制できるものではないということも付け加えたい。復帰するという考えに本人自身が取りつかれる必要があるのだ。ちょうどジェーニャ・プルシェンコが取りつかれたように。そこでは、自分にサポートがあるかないかなどすでに何の意味も持たない。
すべてが順調なときはむしろ危険だ。何度も繰り返し言い続けていることだが、温かいミルクの中を泳いでいると目的地にたどり着くのは非常に難しい。よじ登り、膝をすりむきながら、全力で這い進まねばならない。そうしてようやく、本当に最高の選手になれる可能性が生まれるのだ。
<原文>
http://winter.sport-express.ru/figureskating/reviews/36486/
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