ズーリン(2)<死ぬか、ヤシの実を打ち落とすか>
(一部抜粋)
― 新採点システムが導入されたときは…
…つばを吐きましたね。
― そしてあなたは「アイスダンスは死んだ」と仰いました。今はどうですか?患者はむしろ生きていますか、それともその逆ですか?
無人島に取り残されたたら、選択肢は2つですよね。死ぬか、それともヤシの実を打ち落とすか。我々は生き延びました。アメリカ人たちがカナダ人たちと一緒になって、非常に良く考え抜いてこのシステムを企てました。フィギュアスケートのロシアの流派にとどめを刺すためにね。彼らは私たちに美しさでも、ラインでも、我らがロシアの魂でも勝てなかったからこんなことをした。私たちはそれに対応する準備ができていませんでした。彼らは5年のあいだ新採点で滑り、そのシステムの導入でもって私たちに冷や水を浴びせたわけです。
でも、私たちは適応しました。システムが悪いとか、良いとか叫んで何の得がありますか?システムは存在するし、私たちはそのなかで生き、そのなかでプログラムを考えなければ。(編集注:五輪チャンピオンの)テッサ・ヴァーチュー/スコット・モイア組は面白いプログラムを滑っていますが、ジーマとカーチャ(※ボブロワ/ソロヴィヨフ組)の昨シーズンのプログラムは上首尾でした。それから…イリニフ/カツァラポフ組が私のところにいた時は「シンドラーのリスト」で観客を泣かせました。つまり、ヤシの実は打ち落とせるということです。
さて、アイスダンスの中位の選手たちの間に、ある種の停滞が認められます。滑っているのは灰色の塊り(※顔のない群衆)で、皆がほぼ同じもの、同じことをしています。リフトやエレメンツは繰り返され、ステップは非常に退屈です。いいですか、2つのステップがダンスプログラム中の1分間を占領し、観客はその間ずっと、ある人間がロッカーとカウンターをやっているのを座って見ているのです。最後に掲示板で、何点だったのか、シーズンベストだったのかを見るわけですが、誰も何も分かっていません。私は座っていて得点に熱くなることがあります。96点って何だ?何に対してだ?そう、今ならもう感じ取れます。今なら、生徒の演技が終わって99点が表示されれば、それは喜んでもいいものだとね。だってヴァーチュー/モイア組が100点なんだから。
でも、昔はすべてがもっとクリアでした。6.0とか、5.9とか…今のシステムで私たちは観客を失っています。人々は会場へやって来て、最終グループまで座って、そして出て行くだけ。みんな分からないのです。それに、他とは一線を画す優れたものも滅多に見られなくなりました。
― でも、客観性が増したのでは?
増した?増したのは費用ですよ。客観性は…ジャッジの周りを走り回っていたし、今も走り回り続けてますね。3人のテクニカルスペシャリストが加えられ、何から何まで決定しています。すべては彼らがどこの国の人間か次第です。審判席に座っているのがカナダ人なら、我々はより大変になります。ロシア人なら、楽になります。ただ、以前ならツイズルを失敗しても五輪チャンピオンになれましたが、今は事実上不可能なので、その点は客観性が増しましたね。今はエレメンツを失敗すると、スピンでもそうですが、即座に7~8点失って「飛ばされて」しまいます。
ちなみに、ジェーニャ・プルシェンコがソルトレイクシティで4回転ジャンプを失敗したとき、彼は五輪金メダルの可能性を事実上失いました。ダンスも同じことになっています。まずい滑りをすれば、離れたところへ跳ね飛ばされます。このようにしてアイスダンスは、常により客観的に採点されてきたペアとシングルに近づきました。だって、あなたに偏見を持っているジャッジでも、あなたの素晴らしいリフトを見て、そのリフトからものすごいスピードでファンタスティックに出る様子を見れば、そのエレメントに「-1」をつけることは物理的にできないでしょ。
これらの進化で、ダンスは10倍難しくなりました。そのことをアベルブフと話して、自分たちがいま試合に出ていたらどうだったか想像してみました。何をしていただろうかってね。私にはわかりません。これほどの回転数や、とてつもない離れ技のようなリフトがあって、しかも繰り返してはいけないのですから。
― 現在のツイズルは、4回転ジャンプのようなものだと言われていますね。
ええ、そうですね、おかしなことです。ツイズルはとにかく練習すればいいだけなのに。ツイズルに重要なのは氷の質なんです。高速で回転しますからね。もし氷が滑らかではなく、エッジ跡の窪みにはまったら大変ですよ。ミスの目立ち方がはっきりと大きくなってしまいます。
<原文>
http://sochi2014.rsport.ru/sochi2014_figure/20130904/684859684.html
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