エフゲニー・プラトフ BOSS (6・完)
仕事に精魂を傾けられないと すぐ駄目になってしまう
― あなたはどうですか?誰かと組んで仕事ができたと思いますか?
さっきお話ししたとおり、ボスでいる方が好きなんだ。マイア・ウソワとはしばらく一緒に仕事をしていたことがあって、たしかに彼女とは組んでたよ。ただ、となりにもう一人カリスマ的なコーチがいた場合、自分がどう振る舞えばよかったのかは分からないな。
― アンジェリカ・クリロワと同じリンクで練習していて、彼女にコーチやボスの素質を感じましたか?
そのころの僕たちは周囲をぜんぜん見ていなかった。僕らの現役時代は、アイスショーでスケートを続けていけるチャンスがたくさんあったんだ。コーチという職業については、僕の世代の選手たちはほとんど考えてなかったな。その難しさをよく分かってたし。でも今は時代が違う。カー姉弟も、レベルの高い試合に出ながら誰かにプログラムをつくったり、誰かの相談役を務めたりしてたからね。アメリカではこれで十分な生活が保証されるけど、ショーの方は年を追うごとにどんどん少なくなってる。「アイス・エイジ」で仕事をもらえるのは、ロシアのスター選手たちとごく僅かのヨーロッパ人だけだよ。
― 自分にコーチの素質があるとは思っていなかったとか?
コーチ畑でやって行くことはジュニアの頃から試してたさ。ただ、コーチというものがどれほど大量の知識を持ち、どんなにたくさん働かなくてはいけないか、現役時代にはちゃんと想像できなかった。
― ボスとしての自分の真価を発揮できる、何か別のビジネスを考えてみたことはありますか?
グリシュクと一緒に滑るのをやめて、その後5年間ウソワとショーで滑っていたときは、氷も見たくないほどだった。自動車関係のビジネスを試しに始めてみて、結構うまく行って、いくらか収入が得られたぐらいだったんだよ。ただ、手応えも満足も感じなくてね。単純に面白くなかったんだ。創造的個性としての自分が死にかけていると分かったときに、選手のサポートを依頼された。これはサインだったよ。仕事に精魂を傾けられず、ただの稼ぎの手段として見ていると、駄目になっていくんだ。
なんだかんだ言って僕たちは幸せな人間だ。好きなことをやって、それで収入まで得られるんだから。
(終わり)
- 関連記事
-
- プラトフ<フィギュア団体戦は成功> (2014/02/09)
- エフゲニー・プラトフ BOSS (6・完) (2013/09/12)
- エフゲニー・プラトフ BOSS (5) (2013/09/11)
- エフゲニー・プラトフ BOSS (4) (2013/08/20)
- エフゲニー・プラトフ BOSS (3) (2013/08/10)