トゥトベリーゼ<自分を良く見せるのも技(わざ)のうち>
2013年9月5日
エレーナ・ヴァイツェホフスカヤ
団体戦でプルシェンコを当てにできる
(略)
自分を良く見せる力は 技(わざ)の別の側面
(略)
― 女子シングルで現在世界最強の3選手が持つ力を、あなたの視点で分析して頂けませんか。ユナ・キム、カロリーナ・コストナー、マオ・アサダのことです。
彼女たちのスケートを分析するなんて、私はいったい何者かしら?
― この選手たちと戦おうとしているコーチですよ、違いますか?
そうね…ある程度はそのとおりね。ユナ・キムのことは、非常に多くの資質において気に入っています。コンビネーションのファーストジャンプをブルーライン(※アイスホッケー用のライン)のところから始めて、リンクサイドで終わるジャンプが好きです。彼女には素晴らしいトランジション、つまり、つなぎのステップがあります。彼女はとても美しく、素晴らしいポージングの感覚とも言うべきものを持っています。何かの身振りをどのように行うべきか、どう見るべきかを正確に知っています。私にとって彼女は、言うまでもなく、現時点でナンバーワンです。チャンピオンの資質を広範囲に渡ってそろえているという点で、これほど際立っている選手は他にいないと思います。
― コストナーは?
驚くべきスケーターです。彼女が滑るところを「生」で見ると、何もかも許してしまいますよ。彼女はいつも「姿」になっているからです。誰よりも優れ、誰よりも美しいという自信を持っていて、見ているこちらも一緒にそれを信じ始めてしまうのです。コストナーはいつもそれで会場をつかんでいます。テレビの画面だと、この魔法は消えてしまいます。例えば、エレメントからエレメントへ移る動作がほとんど無いことがすぐに分かります。コーナーで非常にスピードを上げておいて、直線部では腕を交互に替えながら、ずっと両足で疾走します。そしてコンビネーションジャンプは、ユナ・キムのようにブルーラインからではなく、事実上リンクサイドのところで跳びます。
もしこれらすべてのことをコストナーではなく誰か他の選手がやっていたとしたら、容赦なく報いを受けただろうと思います。でもカロリーナは許されるのです。それは、彼女がある意味古い時代から「新しい」フィギュアスケートへ入ったからかもしれません。この状況でジャンプの入りのテクニックを変えるのは難しいことです。それに、プログラムの最初から最後まで維持するものすごいスピードが、人々の歓心を得ます。ただ、その反面、もしカロリーナがジャンプとジャンプの間にもっと難しいステップをやっていたとしたら、そのスピードを保つことができたかどうか。
― コストナーの衣装を作っているのはたいてい優秀なファッションデザイナーで、みんなそれに慣れ親しんでいます。フィギュアスケートにおけるこのような経費は、あなたの考えでは正当なものでしょうか。
そういう衣装を着て選手が良い気分になるなら、ダメな理由があるかしら?私は実際、カロリーナの衣装がすべて好きというわけでは全くありません。彼女のグレーのコンビネゾンを覚えていますが、靴のところまで荒っぽく引っ張られていて、私はいつも不快でした。他のどの選手があんなことを許されたかしら?でも、カロリーナはああいう女王のような姿でリンクへ出てきて、みんなうっとりしてしまったのです。これは技(わざ)の別の側面だと思います。
― アサダは何で勝負していますか。
まず何よりも軽やかさですね。彼女が疲れているところを見たことがありません。最後にはみんな疲れてしまうステップでも、アサダはスピードを上げているかのようです。ただ、コストナーやユナ・キムのようなスピードとパワーはもちろんありませんが。
― では、どうやってトリプルアクセルを跳ぶのでしょうか。
非常に良いひねりと軽やかさの賜物です。マオは日本人の遺伝子によって、完全に子どもの身体を保つことができました。我々ロシアの女子には決してできないことです。ただ、彼女の着氷の跡を見ると、ほとんどすべてのジャンプが回転不足だと分かります。コストナーは、例えばですが、エッジ全体で降りています。その代わりアサダは、足首の動きが素晴らしいのです。トゥで着氷し、それを非常に素早くひねって…なぜ笑っているの?
― あなたがスパイのように懐中電灯を持ってリンクを這いまわるところを想像して…
いいえ、もっと簡単なことですよ。練習中リンクサイドに立っていると、自分の目の前にあるリンクの3分の1がよく見えるのです。特に製氷したてのリンクで練習が行われる場合はね。1年前、中国へ行ったとき、誰がどんな着氷をするかに焦点を当てて見ていました。いわゆる病的なテーマです。実はジュニアでは、回転不足は非常に厳しい判定を受けます。だからみんな正確に、真後ろを向いて着氷する努力をするのです。ぼんやり(?)せずにね。
― 2度の世界チャンピオン、ミキ・アンドウが出産を経て復帰しようとしていますが、驚きませんでしたか。
ミキがニコライ・モロゾフのもとで練習していたときに、彼女を観察する機会が何度もありました。復帰するのは非常に難しいでしょう。だって、待っている人が誰もいないのですよ。あぁ、この選手は昨シーズン滑っているなとジャッジが認識し、そこでならいつも許されるミスが、彼女には許されないという点が重要です。なので、この一歩を踏み出す勇気がミキに十分あるのかどうかすら、私には分かりません。彼女は非常にパワフルな選手で、非常にセクシーです。これは人を惹きつけます。彼女がジャッジに腕を投げ出しながらリンクの上に数秒間立つだけで、そこに何かクレイジーなエネルギーと激情を感じるかもしれませんよ。
もしアンドウがルッツ-ループのコンビネーションと、残りのジャンプすべてを取り戻すことができるなら、言うまでもなくメダル争いができるでしょう。とはいっても、今あれこれ品定めをしたトップスリーの次に、私の頭に真っ先に浮かんだのはアンドウではなく、アキコ・スズキですが。
― なぜですか。
彼女は機能という観点で非常に強いのです。多くのエレメンツがプログラム後半に配された、とても難しいプログラムを持っています。したがって、スズキがすべてやり遂げれば、間違いなく非常に高い技術点が出ます。もちろん、彼女はキムやコストナーではありませんが、それに近いところにいます。コストナーのようなスピードが出ないのは言うまでもないことです。カロリーナの足はアキコよりも長いようですからね。その代わり、スズキは非常に練習熱心です。すべて努力で勝負します。私はこういう選手に大きな尊敬の念を抱きます。
(以下略)
<原文>
http://www.sport-express.ru/velena/reviews/35238/
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