タラソワ<ロシアのダンスカップルに五輪メダルを獲ってほしい(2)>
男子シングルについては多くを語っていませんが、タラソワコーチのフィギュアスケート観がうかがえるお話がいろいろ。
― 演出家が選手と一緒にリンクにいるのと、リンクサイドから(※指示を出して)仕事をするのと、違いは有りますか?
有るとも無いとも言えます。かつての私はスケート靴を自由に操り、選手たちと1日8~12時間滑っていたのですよ。自分からリンクへ出るのをやめたのは、アレクセイ・ヤグディンと仕事を始めて2年目。ニコライ・モロゾフなら完全に私の「足」になれると分かったときです。チェルニショフはというと、足にも頭にも魂にもなることができました。彼の選手たちとの仕事ぶりは素晴らしく、あっという間に教え込みます。彼自身が非常に豊富な技術的武器を持っています。重要なのは、すでに時が示しているように、彼は考えついたことを達成できるということです。こういう人間はどんなチームにも必要不可欠だと思います。
それからもうひとつ、本格的な演出家という点で、モロゾフやサーシャ・ズーリンだけでなくイリヤ・アベルブフが積極的になったことを嬉しく思っています。フィギュアスケートにおける競争は選手やコーチの間だけでなく、振付師の間にもあるべきです。
― あなたはもうスケート靴を履いてリンクで仕事をすることができませんが、残念な気持ちになることはありませんか?
身体機能の点では、もちろん、別の感覚を得られればいいのにと思います。例えば、掴んだり、走ったりできればいいのにと。でも、椎間板の手術後は、それは夢でしかありませんね。
― 今シーズン、男子シングルでは何が起こるでしょう?
何か新しいものが見られれば面白いでしょうね。見られると思っています。とにかくジャンパーだと思われてきたようなスケーターが、ジャンプだけでなくスケーティングも始めるはずですよ。ショートプログラムから2本の4回転ジャンプにトライする姿もきっと見られるでしょう。
― それは、羊の皮はなめすに値せず(※骨折り損のくたびれ儲け)なのではありませんか?得るものより失うものの方が大きいかもしれないのに。
若い選手はそのような分別に従うべきではありません。若者はリスクを冒し、前へ進むべきです。これが名を上げる唯一の道です。他のどんなやり方でも、フィギュアスケートを前へは動かせませんよ。
― 一年前、ヨーロッパ選手権のペア競技を総括するなかで、あなたはこう仰いました。「アリオナ・サフチェンコはこれで引き下がるような人ではない。彼女とロビン・ショルコヴィーは、ヴォロソジャル/トランコフ組に負けず劣らず五輪優勝への闘志を燃やしている」と。カナダの世界選手権でマクシムとターニャが勝ったことで、二人の優勢は決定的になったのか、それとも別の可能性があるのか、どう思われますか?
誰がライバルかではなく、自分が何をしたかが重要なカギを握ります。ヴォロソジャル/トランコフ組は稀有な可能性を持った稀有な選手です。大いなる道を歩んできた二人ですが、まだ開花しきってはいません。私は、ご存じのように、アリオナに非常に敬意を払っていますが、昨シーズン彼女がロビンとともに見せたスケートのスタイルは、合理的すぎて、エモーションが奪われていたと言えるでしょう。スピードが失われ、思考が失われていました。選曲も奇妙な感じがしました。結局のところ、フィギュアスケートは室内芸術ではないのです。ドイツペアを勘定から外すことはもちろんできませんが、私個人的には、ロシアのペアとロシアのコーチが成功するのを見たいですね。
そうそう、タマーラ・モスクヴィナコーチのペアも忘れてはいけません。カワグチ/スミルノフ組は昨シーズン、見るからにうまく行きませんでしたが、あれは単純に失敗でした。二人が根本的に違うレベルで滑るようになり、非常に大きな結果を出せると言えなくなるような、そんな失敗ではまったくありません。
― ヴォロソジャル/トランコフ組がいるのに、ニーナ・モゼルのグループへ昨シーズン、いちどに2組の強いペアが別々のコーチのもとから移籍しました。不安ではありませんか?
なぜ不安にならなければいけないのですか?ニーナは非常に賢明で熟達したコーチです。そうしたということは、自信があるということです。私がかつて抱えていたグループでは、同時に5組のダンスカップルが滑っていました。そして世界選手権で上位5組を占めたのです。スタニスラフ・ズークも、1組だけ教えていたことはありません。最低でも3組です。それに、これは大人の、成熟した選手の話だということを忘れてはいけません。彼らは何が欲しくて、何のために来たかをよく理解しています。課題を与え、何を、どのようにやるのかを判断すればいいだけです。ニーナはきっとすべて上手くやるでしょう。
(つづく)
<自習メモ>
Овчинка выделки не стоит. 羊の皮はなめすに値しない、骨折り損のくたびれ儲け
сделать себе имя 名をあげる
- 関連記事
-
- タラソワ<ぬいぐるみになってリンクへ飛びこみたかった> (2013/11/29)
- タラソワ<コフトゥンは青い滑りをした> (2013/11/24)
- タラソワ<ロシアのダンスカップルに五輪メダルを獲ってほしい(2)> (2013/08/31)
- タラソワ<ロシアのダンスカップルに五輪メダルを獲ってほしい(1)> (2013/08/31)
- タラソワ<ロシアのダンスカップルに五輪メダルを獲ってほしい(4・完)> (2013/08/29)