タラソワ<ロシアのダンスカップルに五輪メダルを獲ってほしい(3)>
― 一年前、韓国のユナ・キムが競技に復帰し、世界選手権で楽々と優勝しました。今の状態の彼女に勝つのはほとんど不可能という印象ができ上がってしまいました。もちろん、もし彼女自身がミスをしなければの話ですが。
彼女はミスしないと思います。ユナ・キムがいったいどんなトレーニングをしているのか、ごく少数の人しか知りませんからね。私はそれを何度も見てきました。キムがジュニアで滑り、私がシズカ・アラカワと仕事していた時からです。彼女はオフアイスで、トップクラスの陸上選手のようなトレーニングをしていました。当時キムのスピード&パワートレーニング(※階段を駈け上がったり、バーベルを挙げたり…のような練習を指すようです)を担当していた女性トレーナーは、今も彼女と仕事をしています。
かつては私も、そういった専門家とタッグを組んでの仕事を、非常にたくさんやってきました。レオニード・ライツィンもそうでした。イリヤ・クーリック、その後アレクセイ・ヤグディンが私のもとで滑っていた頃です。彼には非常に多くのことを学びました。それどころか、私は自分のトレーニングプランのすべてを、レオニード・モイセエヴィチのプランに基づいてつくっていたのです。なにしろ、ある一定の練習段階においては、私たちが氷上でやっていたことよりも、スピード&パワートレーニングの方が重要でしたからね。
アラカワはこの手の練習はしていませんでしたが、生まれつき非常に頑丈で、常にランニングをし、プログラムの通し練習を非常にたくさんしていました。フリーを10回続けて滑ることもあって、私を仰天させるほどでした。アサダと仕事をし始めたとき、私はまず初めに彼女の母親にこう助言しました。日本人のフィジカルトレーナーを起用するようにと。だって私たちは何が何でもフリープログラムにトリプルアクセルを2本入れて、ショートでもう1本跳ぶ必要があったのです。アサダのルッツが正しくなかったからです。彼女は誤ったエッジでルッツを跳んでおり、当時のルールでは、そのようなジャンプはほとんど有効と認められず、マイナスになりました。
マオが五輪後のシーズンにうまく行かなかったのは、専門的な基礎練習のトレーナーに力を借りなかった、まさにそのことで説明がつくと思います。後になって、私の助言どおり、トレーナーを起用しましたが。
― ソチでユナ・キムに勝つ力が、アサダにはありますか?
ユナにはスポーツの豊かな才能と経験があります。彼女は素晴らしく疾走し、素晴らしく跳躍し、素晴らしく回転します。ただ、それを外側から見たとき、私はそれに心を動かされないのです。マオに感情移入しているわけじゃありませんよ、分かっていただけますか?オリンピックでキムに勝てるのは、会場全体を手中に収め、会場全体を率いて行くスケーターだけでしょう。
(つづく)
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