トランコフ<FSの人物像は複雑でドラマチック(中)>
マクシム・トランコフ:初めのうちニーナ・ミハイロヴナ(モゼル)は、こういう複雑な人物像を責任のかかるシーズンに選ぶ価値があるのかどうか、疑念を持っていました。当然、何らかの批判が出てくるでしょうし、すべての人が僕たちを受け入れてはくれないでしょう。でも、僕とターニャ(※タチヤナの愛称)は強引に突き進むことに慣れています。いつも品定めされて、多くの人に信じてもらえなかったり、逆に余りに強く信じられることに慣れています。だから恐れや危惧は一切ありませんでした。準備はできているとニーナ・ミハイロヴナコーチに告げ、同意してもらったんです。
タチヤナ・ヴォロソジャル:ペア競技に軌道を与えることができれば素晴らしいですね。私たちを見て、同じようになりたいとか、もしくは何か真似したいなんて思ってもらえたら、とても嬉しいです!
― マクシム、イエス・キリストの人物像を外見から作っていくつもりですか?
僕はすでにその人物の格好をしようとし始めていますよ。髪と髭を伸ばしています(微笑)。まぁ、髭は昨日剃りましたが。かなり伸びていて気に入らなかったんです。ボリス・グレベンシコフ(※ロックミュージシャン。こんな人)みたいで!髪の方は、伸ばそうとしているんですが、何だか伸びるのが遅くて。
― 何故そのロックオペラに子どもの頃から夢中なのですか?
マクシム・トランコフ:兄がいつもロックミュージックに夢中だったんです。6歳年上なので、僕はどこかしら兄の影響を受けていました。よくあることです。ある日、兄がそのレコードを持ってきて一緒に聴きました。そして、この作品がどんな論争を呼んだか、どれほどスキャンダラスなものだったかを話してくれました。社会の多くの層で、とりわけ信心深い人々の層で、この作品は敵意を持って受け止められました。僕はというと、音楽がとても気に入りました!
後になって、アイスダンスのイリーナ・ロバチョワ/イリヤ・アベルブフ組が『ジーザス・クライスト=スーパースター』の曲でプログラムを滑るのを見ました。その瞬間にもうすごく滑りたくなって、二人の演技を見ながら、自分はもっと上手くやれると思ったんです(笑)!とても強くて、普通とは違う、輝かしいプログラムだったのですが、僕は何か違うものをやりたかった。僕はこのミュージカル作品そのものをよく知っていて、誰がどのアリアを歌っているか詳細まで知っています。
このロックオペラをモチーフにしたスケートのプログラムを複数見ましたが、僕にはどうしても理解できませんでした。選手たちは何故こんなふうに音楽の断片を構成するのか?いまキリストを滑ったばかりなのに何故ここでピラトが歌うのか?。皆さんリズムの良い部分を選んでいますが、僕に言わせれば、多くのプログラム構成はただの不協和音でした。僕としては、プログラム中で語られるのは1人か2人のストーリーであってほしかった。
タチヤナ・ヴォロソジャル:時間が限られているので、私たちが演ずるストーリーはもう少しコンパクトです。マリアがキリストへの愛に苦しみ、彼を助けたいけれど何と言えばいいのか分からない、というシーンは入っていません。
マクシム・トランコフ:僕たちに残されたのは、二人が一緒にいるシーンだけ。ゴルゴダの丘へ行くことになったキリストが、出発前に歌い、そこでマグダラが泣き、すべてをもう一度初めからやりなおしたいと願うシーンです。そしてもちろん、ラストの昇天。もっとも重要で、力強いシーンです。割り当てられた時間内で、ウェーバーのオリジナル作品が最大限収まるような音楽構成にしようと、僕たちは努力しました。
(つづく)
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