エフゲニー・プラトフ ＢＯＳＳ (3)

ロシアのカップルと仕事をする用意はできている

　―　あなたは五輪二連覇を果たしたチャンピオンですが、大きな大会でメダル争いができていないカップルと仕事をすることは、面白いのでしょうか？

　ある偉大なコーチがこんなことを言ってた。「私は自分の生徒を10年間待った」とね。僕はまだまだこれからだ。エリート選手と運よく仕事ができて、やり遂げることができればいいなと思うよ。ただ、自分の選手をそのレベルまで導くというミッションも負けず劣らず面白いものさ。

　―　いまだに皆が不思議がっていますが、あなたの生徒の中で最も成功したカップルであるカー姉弟は、なぜ地元シェフィールドのヨーロッパ選手権を待たずに引退を決断したのでしょうか…

　引退というものは適切な時にする必要があるんだ。カー姉弟は正しい決断をしたと思ってる。すでに若きライバルたちが後ろに迫っていたし、シニードとジョンがシェフィールドの表彰台に果たして立てたかどうか。なにしろ二人はペアとして競技を始めて、その後ダンスに転向して、そして新採点システムへの移行で大変な経験をしてきたんだから。二人の身長差では新しいリフトを考案するのも難しかったし。

　2011年のベルン（※スイス）のヨーロッパ選手権でメダルを獲って、あの子たちは永遠の敗者ではなく、勝利者のランクへと抜け出た。イギリス人である二人を、シェフィールドで祖国の壁が助けてくれるかどうかは分からなかったさ。もうひとつ引退の理由になったのは、シニードの怪我だ。彼女はもう32歳だったからね。

　―　数年前、ロシアのダンスカップルとも喜んで仕事をしていただろうと仰っていましたが…

　今でも同じことを言えるよ。僕のトレーニングリンクの扉は開いている。ロシアフィギュアスケート連盟のアレクサンドル・ゴルシコフ会長とワレンチン・ピセーエフ総裁とは、素晴らしい関係にあるんだ。もし僕の助けが必要ならいつでも援助できるよ。

　ただ、アメリカに家を持つことになったからね。僕とオクサナは長野オリンピックへの準備をアメリカで行って、この国で生活するのがとても快適だと感じたんだ。両親にも海を渡ってこっちへ来てもらった。姉（妹）と甥っ子たちだけが残ったけど、そのオデッサも、今は外国になってしまったね。

　アメリカには家と、家族と、仕事がある。そのせいでロシアのダンスカップルと仕事をするのがとても難しいんだよ。アメリカは素敵な国で、仕事をするための立派な環境と、事実上の自分のリンクがあって、朝から晩まで使える。ただ、ヨーロッパからとても遠くて、飛行機での往復料金は毎年どんどん高くなる。こういう困難にも関わらず来たいという思いがあれば、いつでもウェルカムだよ。


　（つづく）

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＜自習メモ＞
пя'тка　かかと
наступать на пятки кому　しだいに～に追いつく

Ми’лости про’сим　ようこそ。さあどうぞ（丁寧な誘い）