<ソトニコワはとても大人になった(中)>ブイアノワ
- どういう意味ですか。
タラソワがリンクサイドにいる状況下でプログラムをつくることは、そのプロセスに参加している者全員にとって大きな試練です。いわゆる、木屑があらゆる方向へ飛ぶのです(※ロシアの諺「木を切れば木屑が飛ぶ」より。「大事業の前に少々の犠牲はつきもの」の意)。ところが今回私が目にしたのは、彼女がチェルニショフの仕事をコーチとしてではなく、観客として見守っている姿でした。満足げに(楽しそうに)ね。ときどき彼に拍手していたほどでした。しかも、うわべだけの拍手ではまったくありませんでした。
私を感激させるは、他者の労作を顕彰するタラソワの能力です。私たちコーチは試合の中で、ライバル選手のうち誰が本当に優れた、自分の教え子よりも良い滑りをしたかを、いつだって素晴らしく良く理解しています。でも、そのことを声に出して言える人はほとんどいません。タラソワはそれができるのです。優れたものを見ると、彼女は心の底から狂喜するのです。
― タラソワがサーシャ・コーエンと仕事をしていた時代のことを覚えています。アシスタントのニコライ・モロゾフが突然、コーエンの直接のライバルであるミッシェル・クワンに自ら進んでプログラムをつくり始めたことに、彼女は大きな不快感を示していました。ところが今は、ソトニコワと仕事をしてあなたを手助けすると同時に、アサダにもプログラムをつくっています。妬ましく思いませんか。
いいえ、思いません。まず第一に、タラソワはソトニコワが現れるずっと前からマオと仕事をしてきました。アサダは私たちのCSKAで愛されていますし、アデリナにとてもあたたかく接しています。二人は本当に近しい関係です。アサダは昨年、自分の日本のショーにアデリナを招いてくれました。この夏もまたそのショーに行く予定で、今度はソトニコワだけでなくコフトゥンも一緒なのですよ。それから、これは言うまでもないことですが、タラソワは選手に対して非常に機転のきく人物です。全員に行きわたるだけのエネルギーを持っています。
― 新しいプログラムは、日本のショーの中で試運転していくのですか。
ええ。とても都合が良いし、しかも有益です。シーズン開始までに何かに磨きをかけたり、やり直したりできる時間です。それにプラス、交流。これは選手にとって非常にためになります。そして、言うまでもなく、日本人選手たちのトレーニングの様子や演技を見る機会でもあります。彼らのトレーニングは(※飽きることなく)延々と見ていることができます。もし自分たちロシアの選手に、この日本人たちのような練習への態度を持ち込むことが出来るなら、私は多くのものを引き換えに手渡していたでしょうね。
(つづく)
<自習メモ>
Лес рубят – щепки летят. 大行は細瑾を顧みず
показной 模範的な、見本の/見せかけの、うわべだけの
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