<フィギュアスケートは私の仕事(下)>アデリナ・ソトニコワ
スケートをやめたいと思ったこと
エレーナ・ゲルマノヴナは私とすぐには仕事を始めませんでした。同じCSKAのインナ・ゲルマノヴナ・ゴンチャレンコのグループで1年ぐらい練習していました。最初のトレーニングセッションは朝8時から。遅れないように、渋滞に巻き込まれないようにと、私たちは1時間半余裕を持って出発していました。いずれにしても時間ギリギリで、私はウォームアップができなくて。そのことで叱られて、一度トレーニングから追い出されてしまったこともありました。私とママは「キーッ」となって出て行ったわ。でもその時はフィギュアスケートを真剣にやめようとは考えませんでした。そう思ったのは後になってからです。
それはクリスマス休暇の頃でした。クリスマスツリーがありました。私たちはそこで演技をしていたんです。その後トレーニングの予定になっていました。私はロッカールームで寝転んでいて、急に手足が全部けいれんして引きつるような感じがしました。顔は青ざめて、目には隈ができて…そこでママが心配してこう言ったんです。「終わりにしましょ、フィギュアスケートはもうたくさんね」って。
私たちは荷物をまとめて家に帰りました。でもCSKAの校長に説得されて。それからは、リンクへ戻ることに不平を言ったことは一度もありません。2~3日休んでリンクへ来てみて、これ無しでは生きていけないと分かったんです。
友だちのこと
友だちは基本的にみんなスポーツ選手です。たぶんお互いに理解しやすいからだと思います。もし誰かスポーツをやっていない同い年の子に自分の悩みを話したら、その子は私を笑うでしょうね。「クレイジーだ。そんなに何もかも取り上げられて、何のために耐えなくちゃいけないんだ?」って思うわ。
私は普通の子たちの生活を本当に知らないので、スポーツのために諦めなくてはいけなかったことについてあれこれ言える立場じゃないんです。私が幸せを感じるために必要なことは少しだけ。休日にゆっくり眠って、友だちと映画館へ行って、カフェでケーキを食べて…これこそが幸せ。ある意味これは素晴らしいことです。私はちょっとしたことで驚けるのよ。
学校にとても仲の良い友だちがいます。体操選手のナスチャ・シュムコワです。何でも話せる人なんです。お互いにね。でも愚痴はできるだけ言わないようにしています。だって何のために?自分でこの道を選んだのに。疲れてるかって?だから何だと言うの。耐えればいいわ。その代わり、この先はもっと楽になるでしょう。
代表チームではカーチャ・ボブロワと仲が良いです。彼女はとてもファイトがあって、まっすぐで、ポジティブ。自分のエネルギーでみんなを文字通り感化するんです。彼女のそばにいると愉快にならないわけにはいかないわ。
注目の的になるのは難しいということ
みんなが私のことを「我々の新しい希望」と言うようになったときは大変でした。でも、そのあと急に別の名前に切り替わって。リプニツカヤ、メドヴェージェワ、その次、その次という風に…みんな何だかすぐに忘れてしまったみたいでした。ロシアの女子シングルを新たなレベルへ引き出し、難しいエレメンツをやったり、トリプルルッツやフリップや3-3のコンビネーションジャンプを跳ぶようになったのは私とリーザ・トゥクタミシェワだということを。すべては私たちから始まったと思っています。私たちのプログラムを見て、多くの人が「あれは何?(?)自分の子どもたちにも難しいジャンプを教えなければ」と思ったと思うんです。まぁ、いいわ、私たちはこれから先も証明していきます。
ライバルのこと
ライバル選手を敵として見ることは決してありません。もしチーム内で私たちがお互いに支え合わなければ、自分たちが損をしてしまいます。その場へやって来て、他の選手たちを高慢な態度でじろりと見て、「あなたたちは誰?そこで何してるの?」というのは私には合いません。そんな状況では全員が負けてしまいます。自分とロシアを悪くしてしまうだけです。
私はもともと信じやすい人間です。以前は私について書かれたり言われたりしていることを全部信じていました。でも、何かを面と向かって言う人に会うと、考えたり、大変な思いをしたり、想像を膨らませたりし始めるんですよ。すべてを気にする価値があるのかどうか、ちょうど分かるようになってきたところです。そういうことが影響して突然いつもの調子が狂ってしまって。最近は、批評はぜんぶ適当に聞き流すようにしています。私は大人になっているんです。変わろうとしているんです。
(終わり)
<自習メモ>
поднять на' смех кого 笑い者にする
жиле'тка チョッキ
плакаться в жилетку(шутл. ирон.) : жаловаться кому-либо на свою горькую судьбу, ища сочувствия, поддержки.
окидывать взглядом(взором, глазами) ~をじろりと見る
принимать(близко) к сердцу 過度に重大視する、気にする、思いつめる/大きな関心を示す
вполу'ха (口)上の空で
- 関連記事
-
- ソトニコワ<日本での滑りにぜんぜん満足していない> (2013/10/10)
- ソトニコワ<聖火リレーから五輪のかけらをもらった> (2013/10/09)
- <フィギュアスケートは私の仕事(下)>アデリナ・ソトニコワ (2013/04/30)
- ソトニコワ<『戦争と平和』を半分まで読んだ> (2013/04/27)
- <フィギュアスケートは私の仕事(中)>アデリナ・ソトニコワ (2013/04/26)