<自分の力で勝ち取った銀メダル(下)>デニス・テン
僕はパトリックがどんな滑りをしたか知らなかったので、自分の得点が出ても、フリーで彼を上回ったことが分かりませんでした。チャンの演技は見ていませんでしたが、音楽は聞こえていました。彼の使っている曲はとてもよく知っているんです。アクセルを跳ぶメロディーのところで観客の反応が聞こえてきて、パトリックがアクセルで何かやってしまったようだと思いました。ルッツの部分でも観客のリアクションが聞こえましたが、この2つのジャンプで彼に何か問題が起こったとは思えませんでした(微笑)。
フランクコーチと試合の後で話をしたとき彼はこう言いました。まさにこんな風に高みに上がるために、常に自分自身の最大限の力をふり絞る必要があるのだと!
― 1位と僅か1点差でしたが、悔しくありませんか?
2位になったのを見たときはもちろん大喜びでした!そして、1位まであと僅か1点だったと分かった(笑)ときは…やっぱりとても満足でした。こういう大きな大会で自身初のメダルを、カザフスタンのフィギュアスケート初のメダルを獲ったんですから!いっぺんに大金を追い求めるのはきっと正しくなかったと思います。僕はまだ若くて、たったの19歳です(微笑)。今回このメダルを獲得できて嬉しいです!とりわけプレ五輪シーズンの世界選手権でしたし。
もし金メダルを獲っていたとしても、それは偶然にすぎなかったと思うんです。でも2位は自分でつかみ取ったしかるべきものだと思っています!それに多分、むしろこっちの方が僕には心地いいし価値があります!
― パトリック・チャンが2回転倒して1位になったのは偶然だと思いませんか?
僕はずっと前からパトリックを知っています。人間としても、フィギュアスケート選手としても。そして言えることは、自分は今たくさんトレーニングをして成長して大きく前進したけれど、パトリックに追いつくにはさらに練習に練習を重ねる必要があるということです。なぜならパトリック・チャンは現在、実際に男子シングルスケートの基準だからです。すでに世界選手権で3度優勝している選手と僕を正確に比較できるとは思いません。
― 今後のご予定は?少し休みますか?
これから陸上トレーナーに会いに行きます。その後、振り付け師と何をするか、五輪シーズンにどんなプログラムをつくるのかをコーチと一緒に考えます。
― 『アーティスト』と別れるのは残念ではありませんか?
今シーズン滑ったプログラムは僕にとって特別なものでした。『アーティスト』のサントラでプログラムをつくるというアイデアに、僕は燃えました。2つのプログラムをつなげて1つの完成形にするという、独特のコンセプトのアイデアが生まれたときは、何か特別なものができるんだとものすごく幸せでした。振付師のローリー・ニコルとこのプログラムに全霊を傾けました。絵画か名作に取り組むように練習しました。世界選手権でこの2つのプログラムを、自分の持てる力を少なくとも芸術面でほぼ出し切って滑ることができて、僕はいま幸せです。
もし力を出し切って滑ることができなかったら、プログラムは変えないつもりだったんです。だってこれがいかに素晴らしい作品か皆さんは見ていないわけですから。でも今は試合の結末にコーチも満足しているので、来シーズンどうするかを考えます。
(終わり)
<自習メモ>
куш 賭け金/(口)大金
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