<馬鹿はチャンピオンになれない(3)>タチヤナ・タラソワ
タラソワコーチがタカハシ病に感染していたとは知りませんでしたが(笑)、血糖値や高血圧に気を付けて、いつまでも元気に吼えていて頂きたいものです。タラソワ改訂版カルメンも見てみたいです!
― 今回の欧州選手権でいちばん気に入ったのは何でしたか。
久々にロシアチーム全員の演技を気に入りました。ダンスカップルのトップ2組がそろってクリーンに滑ったのは良かったですね。ただ、いくつかのエレメンツのレベルには疑念を持っていました。試合のとき、私はテクニカルパネル席をちょうど見下ろす位置に座ることになりました。そしてその席から、テクニカル・コントローラーのガリーナ・ゴルドン-ポルトラク(※Halina GORDON POLTORAK)がコンピューター画面上でエレメンツを見逃すところが見えたのです。彼女は、私が注意を払ったまさにそのエレメンツを見逃しました。つまり、私の疑念は根拠の無いものではなかったわけです。
私たちロシアのアイスダンサーのプログラムは、もっと多様で、もっと“ダンシング”であるべきだと思います。それにプラス、斬新なエレメンツ。アメリカとカナダのカップルには常にそれがあります。ロシアのカップルに何か驚くようなリフトがありましたか?私は思い出せません。ボブロワ/ソロヴィヨフ組はとても美しいリフトを1つ、リンクを斜めに突っ切るかたちで行っていましたが、新しいものではありませんでした。私は、狂喜であっと叫ぶようなエレメンツが見たいのです。
― 言い換えると、ロシアのダンスカップルのプログラムはあまり印象に残らなかったということですか。
プロトコルというものがありますからね(?)。取りあげて見てみましょう。ザグレブでロシアのデュエットは事実上ノーミスの滑りをし、169.25点と169.14点を獲得しました。メリル・デーヴィス/チャーリー・ホワイト組はグランプリ・ファイナルで183.39点、テッサ・ヴァーチュー/スコット・モイア組は179.83点でした。後者には明らかなミスがあったにも関わらずです。
デーヴィス/ホワイト組は、そのエレメンツでいつも私を感嘆させます。もしくは、ヴァーチュー/モイア組のダンスを掴み取ることです(?)。彼女たちの『カルメン』の解釈には狂喜できないかもしれませんが、私個人的には、振付の観点においてこの作品を気に入っています。私なら何かを違う振り付けにしただろうとは思いますが、それはまた別の問題です。例えば、テッサとスコットの曲のいちばんドラマチックな部分でサーキュラーステップが行われていますが、何かもっと表情豊かで強いものが欲しいですね。でも、彼女たちがプログラムを強化したとして、それでどうなるというのでしょうか。ロシアのデュエットに20点ではなく、30点差をつけて勝つのでしょうか。
まさにこのことを私たちは考える必要があるのです。リンクへ出たら観客がショックを起こすような仕事をしなくては。そのために手元に残っている可能性をすべて利用しなくては。そうでなければ、競争の話など何もできません。
― ひょっとすると、外部から演出家を招くお考えがあるのですか。
もし力を貸してもらえるなら、そうしない理由がありますか。
― 自分の受け持つ選手の口から、あなたではなく、例えばローリー・ニコルにプログラムを作ってもらいたいと聞くのは悔しくありませんか。
ローリーは素晴らしい演出家です。それは明らかです。少なくとも、私たちはすでに数年にわたってマオ・アサダ用のプログラムを一緒につくっていますから、よく分かります。1つはローリーがつくり、もう1つを私がつくるのが恒例です。この点では他人の作品に対する嫉妬、ましてや羨望などありません。私は生涯で何十ではなく、何百ものプログラムをつくりました。中には観客を総立ちにさせたものもあります。それに、自分が受け持つ選手のプログラムの中に何か別の“手”を見られたらと思うことがしょっちゅうありました。これは、人間が成長し続けるために必要なことなのです。同じ選手と長期間にわたって仕事をするときは特にそうでしょう。
私は、ローリーがコフトゥンにプログラムをつくってくれればと思っています。でも、まずは彼女が彼を見て、彼に“感染”し(※巻き込まれ)なくてはなりません。かつて私自身がダイスケ・タカハシに“感染”したように。彼が初めて大舞台に立ったときのプログラムは、私のつくったものだったのですよ。
いま現在の仕事に関して言えば、アデリナ・ソトニコワの今季のフリープログラムをつくったのが私で、ショートはイーラ・ズークの作品です。このことを私はとても嬉しく思っています。というのも、イーラとレーナ・ブイアノワとは同い年で、同僚で、友人で、多くの物事に対して同じ見方をしています。私なら自分ひとりでも上手くプログラムづくりの仕事を処理できただろうに、というのは間違っています。以前のような力はもうありません。まず足を痛めています。それに脊柱の大きな手術の影響もあります。ですから、いま自分に仕事を続ける力があること、自分が係わって誰かに助力できることをただ嬉しく思っています。
(つづく)
- 関連記事
-
- <プルシェンコの五輪代表入りは困難>タチヤナ・タラソワ (2013/05/01)
- <馬鹿はチャンピオンになれない(4・完)>タチヤナ・タラソワ (2013/02/07)
- <馬鹿はチャンピオンになれない(3)>タチヤナ・タラソワ (2013/02/05)
- <馬鹿はチャンピオンになれない(2)>タチヤナ・タラソワ (2013/02/03)
- <馬鹿はチャンピオンになれない(1)>タチヤナ・タラソワ (2013/02/01)