<元のリーザはどこへも消えていない(下)>エリザヴェータ・トゥクタミシェワ
リーザ、ダバイ!!
― 昨シーズン、いちばん良かったことは何ですか?
グランプリで2試合とも優勝できたことでしょうね。私に間違いがなければ、デビューシーズンではそれまで誰も成し遂げていなかったことだと思います。マオ・アサダやユナ・キム(筆者注:バンクーバー五輪チャンピオン)でさえも。確かに、ファイナルではあまりうまく行きませんでした。エモーションが低下してきて、疲れが溜まってしまったんです。だからロシア選手権のときは最高の状態ではありませんでした。でも、オリンピック(筆者注:インスブルックのユース五輪)では集中して、優勝することができました。
― では、逆にいちばん難しかったことは?
(考え込んで)今シーズンに比べれば昨季はそんなに難しくなかったと、今になって思います。前半に試合がとても多かったことを別にすれば。
― 世界選手権とヨーロッパ選手権への出場が許される年齢になりましたね。なにか更なるエモーションが呼び起されますか?
私は予測したり、計画を立てるのは好きじゃありません。いま目の前にあるのはグランプリ・パリ大会です。それが終わったら次の試合の準備をします。今ひとつだけ分かっているのは、今シーズンは昨シーズンのように自分に負担をかけてはいけないということです。早い時期に疲れてしまわないように。去年のロシア選手権はまさにこれが原因で崩れたんです。でも、あのときは特に刺激がなかったんです。だって、この試合は私に何も与えてくれないものでしたから。でも今年はまったく違います。ロシア選手権で良い滑りをする必要があります。そうでないとヨーロッパ選手権にも世界選手権にも派遣してもらえません。
― グランプリで輝かしいデビューを果たし、注目が振りかかってきたことが、疲れの原因のひとつになったのではありませんか?
実際、大騒ぎにはなりました。でも今はたくさんの小さな女の子たちや、同い年の子たちがシニアに上がって来ました。それからは、私たちが良い滑りをする場合だけ注目が大きくなり、あまり良くなければ注目されないという具合です。それに去年はシーズンを早く切り上げたので、私は少し忘れられてしまいました。今はずっと静かになっています。
― また自分のことをできるだけ早く思い出してもらいたいですか?
もちろんです!私のことを忘れてはいけないということを、皆さんにお見せしなくては。リーザ・トゥクタミシェワはどこにも去らないし、滑り続けるし、どんな成長期も妨げにならないと証明することです。
― アレクセイ・ミーシンの男子選手たちのグループで練習されていますが、居心地は良いですか?
ええ、それはまったく平気です。子どもの頃から男子の仲間が好きなんです。もちろん女の子の友だちもいて、一緒にいるといつも面白いし、楽しいです。でも、男の子と友達づきあいをする方が楽なときもあります(微笑)。とはいっても、私がまだ小さくて、ペテルブルクへ来る準備をしている頃、そこは男の子ばかりだと知らされたときはとても恐ろしかったです。女の子が全然いないと思ったんです。でも、別に怖いことじゃありませんでした。
― 男の子たちに最初の頃、からかわれませんでしたか?
いいえ!私は子どもの頃はすごく静かで、目立たなかったんです。最初の合宿で、私は声が出ないとみんなに思われたんじゃないかしら。だってほとんど何も喋らなかったから。でも後になって、私が本当はどんなに朗らかなのか気づいてもらえました(笑)。例えばアルトゥール(筆者注:ガチンスキー)とは、今はとても仲が良いです。
― 彼はいま苦しい時期にありますね。何か彼を支えようとしていますか?
私がいなくても、彼には支えてくれる人がたくさんいます。それにアルトゥール自身がすべてをよく理解していて、落ち込んではいません。これはオリンピックでも世界選手権でもありませんし。
― 事実上あなたに子ども時代から関心を寄せているジャーナリストたちがいますが、最初の頃は怖くありませんでしたか?
はじめはとても怖かったです。何か正しくないことを言ってしまわないか、何かを忘れていないかと。今は多かれ少なかれ、快適ですよ。
― フィギュアスケート界でアイドル(憧れの選手)はいましたか?
いいえ、いません!誰のこともモノマネしたり模倣したことはありません。アイドルはいませんでした。スポーツ界だけじゃなく、音楽界にも映画界にも。ひとつだけとても気に入ったのが、ジョアニー・ロシェット(筆者注:カナダ人。2010五輪銅メダリスト)の滑りと、見せ方です。
― ユナ・キムは?
いいえ。彼女はとても良い滑りをします。それを議論するつもりはありません。でも、もし私が自分のライバルになる可能性のある人に夢中になり始めたとしたら、とても変だったと思います。いつか彼女はライバルになるとすぐに分かりました。
― では、エフゲーニー・プルシェンコは?ミーシンのグループに入って、彼のことをぽかんと口を開けて見ていたはずだと思いますが。
もちろん、「うわぁ、プルシェンコ…」ということはありました。例えば、彼がリンクでどんな風に自分を見せるのか、私はそれをチラチラ見ていました。それに、彼からはときどき注意を受けます。より正確には、注意ではなく助言です。あれはこうした方が良いとか、視線をどちらへ向けるべきかとか、そんなことです。ジェーニャが私に何らかの注意を払ってくれるのは嬉しいです。でも、彼はだいたい女の子にはとても良くしていますから(笑)
(終わり)
<自習メモ>
разве что を除いて Сегодня не приеду, разве что завтра.
вали'ть 押し倒す、伐り倒す/(責任などを)なすりつける
провали'ть 崩壊させる、だいなしにする/(試験で)落とす
дразни'ть からかう
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