<プルシェンコはトリノ五輪よりも良い状態(下)>アレクセイ・ミーシン
お会いしたかった・・・
― プルシェンコがグループに戻って来たことで、彼がダメになったわけではないようですね。
むしろアルトゥール・ガチンスキーが現れたことで、他の選手たちが刺激を受けていると言いたい。男子シングルで我が国から久々に世界大会のメダリストが出たわけで、この結果は言うまでもなく、我々チーム全体の導きの星だ。
エフゲーニーが戻って来たことで、逆に彼は駆り立てられている。強い人間が2人一緒にいることの効果を、私はずっと以前から知っている。初めはウルマノフとヤグディン、次にヤグディンとプルシェンコ、そして今度はプルシェンコとガチンスキーだ。
― イタリアで行ったのはトレーニングだけですか?
もし最高レベルのスポーツ選手やコーチが、自分は映画や劇場やディスコや美術館へ行ったり、ガールフレンドと公園を散歩していると言えば、それは嘘をついているか、もしくは彼らがそれほどハイクラスのスポーツ選手ではないか、どちらかということだ!スポーツで高い目標を掲げていれば、自由な時間はすべて奪われる。したがって、リンク以外の生活は事実上存在しない。
― スタニスラフスキー風に、「私は信じません」。(※1)
まぁ、2~3回だが、実際にベネツィアへ行く時間はあったし、ヴェローナへ行ってジュリエットのバルコニーにも立った。これも大切なことなのだ。それでも、そういう日でもやはりトレーニングは行った。ライバルは眠っていないからだ。立ち止まればたちまち追い越されてしまう。私の選手生活あるいはコーチ生活の中で、追い越されたという経験はごく僅かで、それは一時的な出来事に過ぎなかったと言いたい。
― グランプリ・シリーズの参加者リストにプルシェンコの名前がありません。なぜですか。
これは戦略的な決断で、ロシアフィギュアスケート連盟の幹部たちと相談して決めたことだ。もしグランプリにエントリーすれば、くじ運次第でどの2大会に振り分けられるかわからない。シーズン初めのアメリカ大会にエントリーされる可能性もあり、準備ができていない状態で行くのは意味が無く、かといって棄権するのも間違っている。プルシェンコはどの国でも歓迎される。彼がいると儲かるからだ。人々の期待を裏切るようなことはしたくはない。
そういうわけで、グランプリ・シリーズには最初からエントリーさせなかった。理解して頂きたいのだが、今回の彼の復帰はバンクーバー五輪前とは戦略的に別のものだ。1シーズンだけ復帰するわけではないので、長靴を叩く戦略、いわゆる「来た、見た、勝った」(※2)では駄目だ。ジェーニャにとって必要不可欠なのは、計画的にエリートの仲間入りをすること、そこでの位置をゆるぎないものにすること、そしてその後に最大限の結果を出すことだ。
(終)
※1 ロシアの舞台監督・俳優の故コンスタンチン・スタニスラフスキーの有名なフレーズ
※2 カエサルがわずか4時間程でゼラの戦いに勝利した様子
<自習メモ>
бить по голенищу =подхалимничать おべっかを使う、ごまをする
- 関連記事
-
- <ガチンスキーの敗因は勝利への過度の熱望>ミーシン (2011/11/07)
- アレクセイ・ミーシン、教え子たちの前途を語る (2011/10/23)
- <プルシェンコはトリノ五輪よりも良い状態(下)>アレクセイ・ミーシン (2011/09/04)
- <プルシェンコはトリノ五輪よりも良い状態(上)>アレクセイ・ミーシン (2011/09/03)
- <ガチンスキーはエリートの仲間入りをした>アレクセイ・ミーシン (2011/04/26)