<プログラム作りは深淵に飛び込むようなもの(4)>エフゲニー・プラトフ
その美しさにぽか~んとしているところです。
リード/シャバリゼ組は残念ながら解散したようなので
イリニフ/カツァラポフ組はプラトフさんのところへ移る方がいいのでは?
と、思わずお節介をやきたくなってしまうような内容ですが
モロゾフコーチにとっては「量」もモチベーションなのかもしれませんね。
質のコントロール
― 選手が去って行くこともよくあるのでしょうか。
そういうケースもいくつかありました。でもそれは、パートナーを失ったり、それ以上資金が続かなくなったり、連盟の要請だったりと、グループに残ることが不可能な状況でした。けんかをしたり、互いの関係がこわれたり、連絡がつかなくなったりというようなことは一度もありません。実際に自分の意思で出て行った人は誰もいませんよ。でも、連れて行かれてしまうにせよ、選手を失った時はとても悔しい思いをしました。まるで、自分から何かが引きちぎられるような感じでした。毎日朝から晩まで一緒に仕事をして、自分の妻や両親よりも顔を見ている時間が長かったのに、それが引きちぎられるわけですから。良い関係だった場合は、とりわけつらいですね。
― もうひとつ、あなたのグループはとても少人数だという特色がありますね。
お前はバカなことをやっていると何度も言われましたよ。たくさんのカップルが練習できるように学校を作って、人を集めなくてはいけないと言われました。それはすごいことだし、経済的にも素晴らしいじゃないかって!でも、私には必要ないんです。小さなチームを持ち、そのチームに最大限の注意を払う。そこから私は喜びを得ているのです。去年、私の元には様々な年齢のカップルが6組いました。さらに、振付師のマイア・ウソワがモスクワへ帰ってしまいました。ひとり残された私は、生徒を十分指導できないことが分かったんです。ひどいことです。
今は振付師もいて、カップルは4組です。これが限界だと思っています。おそらく、私がもっぱら“質”で仕事をするのが好きだからでしょう。“量”は私を殺してしまうのです。自分自身が疲れているところに、さらに自分のどのコンベヤーがうまく動いているかを把握するわけですから。それが良いという人も、それで成功する人もいるでしょう。でも、これは私には当てはまらないと私自身がわかっています。決して働きすぎたくないということじゃありません。ただ、3つか4つのカップルと滞りなく仕事を終えて、そして休息する。これだけで私には十分な喜びなのです。どうやら、すべて質で動いているようですね。
― ロシアへ戻って来たコーチは、外国人選手との仕事を禁止されるかもしれないという噂がありますが、それについてどう思われますか?
それは初耳ですね。でも、自分はロシアのパスポートを持っていてロシアの国民なのに、ロシアのために働いていないということで打ちのめされるような思いになることはあります。私は自分の国を助けたいと思っています。アメリカへ行ってしまったとはいえ、どうでもいいというわけではないのです。自分のグループにロシアのカップルがいた時は、祖国の言葉で話し、トレーニングができて楽しかったですね。それから、今年の世界選手権をモスクワが引き受けたことは素晴らしかった。みんな私のことをまだ覚えていて、知っていて、それに、愛してくれているようです。サインをもらいに来たり、一緒に写真を撮りに来たりするファンたちがたくさんいました。通路を通れないぐらいにね。こういうことは大好きだし、大切にしているので、決して断ったりはしません。
でも、私は、自分が住みやすい国を選びました。そのことによって、残念ながら、ロシアの選手と仕事をすることができません。彼らのところへ行くのは私にとって非常に大変です。彼らにとっても私のところは遠い。だから、私たち外国で働く者は、自分たちのことを自由な芸術家と呼んでいます。私はどんな国のどんな選手ともトレーニングをすることができ、それは正常で、正しいことです。禁止というものはありません。自分が自分のプロデューサーであり、芸術家なのです。ただ、もし私がモスクワで仕事をしていたとすれば、外国人を生徒には取らなかったと思います。良心が許さなかったでしょう。
(つづく)
- 関連記事
-
- <プログラム作りは深淵に飛び込むようなもの(6)>エフゲニー・プラトフ (2011/06/02)
- <プログラム作りは深淵に飛び込むようなもの(5)>エフゲニー・プラトフ (2011/05/31)
- <プログラム作りは深淵に飛び込むようなもの(4)>エフゲニー・プラトフ (2011/05/28)
- <プログラム作りは深淵に飛び込むようなもの(3)>エフゲニー・プラトフ (2011/05/26)
- <プログラム作りは深淵に飛び込むようなもの(2)>エフゲニー・プラトフ (2011/05/24)