<プログラム作りは深淵に飛び込むようなもの(2)>エフゲニー・プラトフ
THE ICEで会えるのがとても楽しみです!
先が見えない恐怖
― プログラムを作るのが恐いということはありますか?アイデアが浮かばないかもしれないとか、どんな結果になるか分からないという恐怖は?
恐いかですって?!カップルに対して責任のある振付師やコーチなら誰だって、プログラム作りの時はお腹がおかしくなります。まるで初めて試験を受けるみたいにね!うまく行くかどうか全くわからないのですよ。実際に新しいシーズンが始まると、もう身体が震える兆しがあるのです!どうしようか?これは受け入れられるだろうか?このエレメントは機能するだろうか?ってね。私はこのプロセスがもう大好きですよ!どれほど不安で、先の見えないプロセスか…ちょうど深い淵の前に立っているようなものです。淵へ飛び込む。水があるかどうかは分からない。岩にぶち当たって死ぬかもしれない。そんな状況です。シーズン途中でぜんぶ変更する羽目になったことが、これまでいったい何度あったか。素晴らしい音楽を選んだつもりだったのに、うまく行かない。かと思えば、何だかよくわからないものを取り上げてみたら、それが「万歳」の声で受け入れられる。予測はつかないのです。
― シネイドとジョン・カーに初めてMuse(※イギリスのロックバンド。カー姉弟は08-09シーズンのフリープログラムとして、彼らの楽曲「Ruled by Secrecy」を使っている)を選んだときは…
…怖ろしかったです。2度目は多少自信がありました。すでにうまく仕事ができていましたから。
シネイドとジョンとの仕事をさらに難しくしたのは、二人が姉弟だということでした。「リュボーフ-モルコーフ」(※ロシアのラブコメ映画)をやらせる訳にはいかないでしょ。Museを私に勧めてきたのは、イギリスの連盟のパフォーマンス・ディレクターです。私のiPodには約6,000曲入っていますが、このグループは入っていませんでした。彼らの曲を聞いて、私は虜になってしまったのです。シネイドとジョンに急いでその話をしに行ったら、二人はすでにこのグループのことを知っていました。イギリス人ですから当然ですね。
「Ruled by Secrecy」は、はじめエキシビションナンバーにと考えていました。毎回トレーニングの最後にこの曲をやっていたのですが、飽きることがありませんでした。曲が深く浸み透り、この曲をとても好きになったので、私たちはこれでフリーダンスを作ってみることに決めたのです。とても不安でしたが、うまく行きました。私の大好きなプログラムです。
― プログラム作りに他人が口出しするのを許すことはありますか。
私は自分で作るのが好きですが、他の人にも門を開いています。シネイドとジョンの最新のプログラムは、ピーター・チェルニシェフ(※原文はロシア語読みのピョートル・チェルニショフ)の助けを借りています。二人が直接私に聞いてきたんですよ、もし彼を招くとしたら反対しないかって。ペーチャ(※ピョートルの愛称)は私の友人ですから、喜んで賛成しました。彼は、私たちに必ず何か新しいものをもたらしてくれる、そんな芸術家です。アイデアは彼のもので、基本的なこともすべて彼の考えです。私たちはそこに少しつけ加えて、順番を入れ替えただけです。このプログラムで世界選手権に出られなかったことが残念です。
自分の肩の上に全てがのしかかっていると、精神的にとても大変です。ぜんぶ自分でやらなくてはいけない、プログラムも自分で作らなくてはいけないというのはね…誰か手助けしてくれる人がいると、楽になります。イギリスのペニー・クームズ/ニコラス・バックランド組のプログラムは、基本的にフィリップ・アスキューが作りました。私はそれを少し変更して、つや出しをしただけです。フィリップは何度もイギリスチャンピオンになっている人です。ペニーの母親と結婚して、彼らは一緒に住んでいます。今や彼はペニーの継父であるだけでなく、振付師でもあるわけです。
(つづく)
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