<僕のストーリーはまだ終わっていない>トマシュ・ベルネル
元は英語だと思いますが、とても楽しくて良い内容なので
一部抜粋してご紹介したいと思います。
プルシェンコのことが本当に大好きなんですね~ (笑)
2011年5月4日
マリア・ニクラシュキナ
僕のストーリーはまだ終わっていない
(ヨーロッパ選手権3位、世界選手権12位という結果について)
世界選手権の12位という結果には、もちろん満足してません。ヨーロッパ選手権の3位にも。シーズン初め、僕はヨーロッパ最強の選手のひとりだと言われていたし、その呼び声をベルンでもモスクワでも証明したかった。でも、シーズン終盤でつきがありませんでした。
(疲労のせい?)
身体の疲れはなかったと思います。フリープログラム後半の4つの3回転ジャンプは全部跳んだし、ステップもスピンもやった。すべて順調でした。ただ、滑り始めのスピードが遅すぎました。コーチいわく、トレーニングの時より2倍遅かったと。きっとこれが原因でしょう。来シーズンは直すようにします。ちょっと頭を使って(没頭して?)練習しないとね。とにかく精神面が大事です、特に終盤の試合では。まさにそこがチャンピオンになるかならないかの分かれ目。今年の僕は自分自身に負けたんです。
(中略)
今シーズンは、全体としてはかなり成功したと思ってます。たしかに世界選手権ではうまく行きませんでした。でも、グランプリシリーズ、特にここモスクワ大会では良かったし、ファイナルにも残った。ヨーロッパ選手権では、素晴らしいとは言えないまでも、十分な結果は出せた。世界選手権も前半は順調だった。ミスをやらかしたけど、こういうことは誰にだって起きます。フリープログラムでは、結果のことを考えるのは後ろに置いておいて、ただ観客のために演技しました。観客の皆さんは本当に感動的でした!心からありがとうと言いたい。最初のジャンプに失敗して、目線をジャッジからファンの皆さんに移したとき、なぜ僕がこんなにもスケートが好きなのかに気づいたんです。それは、この人たちがいるからなんだって。
(中略)
シーズンを締めくくる世界選手権で表彰台に立てていたら、もっと良いストーリーだったでしょう。いちばん高いところじゃなくても、首にメダルがかかっていたら有頂天になったと思う。でも、僕のストーリーはまだ終わってませんよ。
すごく世界選手権のメダリストになりたいし、表彰台に立ちたい。「僕をずっと応援してくれたみんな、ありがとう。(みんなが僕を応援してくれた数年間は)ムダじゃなかったよ。みんなが僕を信じてくれて、そして僕はやったよ」って言うためにね。でも、ひょっとすると、このことは忘れなくちゃいけないのかもしれません。強すぎる願いは夢を打ち砕いてしまうから。
(中略)
(オリンピックでは具体的な目標をもっていた?)
ブライアン・ジュベールをご存じですよね?彼のことをちょっとお話ししたい。僕は彼を気にってます。彼にはヨーロッパ選手権で負けたけど、全然がっかりはしなかった。だって、彼が氷上でやることには感動させらるから。それに、人間としても好感を持ってます。
でも、ブライアンにとってオリンピックは禁断のテーマ。メダルを渇望しているのに、なにも得られない。それは、彼がそれを強く望んでいるからに他ならないんです。ジュベールはもう3回もオリンピックに出場したのに、一度もうまく行かなかった。
僕のオリンピックはと言うと、大惨事です。トリノで18位で、バンクバーで19位。つまり、4年間で順位を1つ下げてしまった。これはひどい!
もちろん、どのスポーツ選手もオリンピックのメダルを夢見てます。もしメダルが獲れたら、競技生活でそれ以上の成功はないと言いたい。ソチでメダルを獲れるように頑張りますよ。優秀なスケーターがたくさん育っていることは自覚してるけど、逃げたり、彼らを前へ行かせてやるつもりもありません。自分に成功する力があると感じたら、2014年のオリンピックに出ます。これが僕の目標になります。競技生活の良い終止符になるでしょう。
(中略)
(来シーズンのプログラムのアイデアを聞かせてもらえますか?)
まだやったことのないようなものになると思う。リンクの上で何か同じようなものをやってきたかもしれないけど、いま自分の時が来たのを感じてるんです。「シング・シング・シング」の音楽でプログラムを作りたいと思ってます。これはスイングだし、とてもテンポが速いけど、何か他のメロディーとミックスするつもり。ローリー・ニコルがフリープログラムを作ってくれる約束になってます。
(中略)
それに、もちろん、(ライバルと)競争できるようにテクニックも根気よく練習します。今年の世界選手権でパトリック・チャンが出した合計280点というのは、信じられないような記録だけど、でも十分に実現可能です。カナダ人に出来たのに、どうしてチェコのスケーターには出来ないっていうの?
(いまパトリック・チャンの名前が出たが、今シーズン男子シングルは進歩したと思う?)
正直に認めるけれど、僕はパトリックの能力の大ファンではなかったし、今もそうじゃない。でも、チャンはとても大きな仕事をやり遂げました。ジュニア時代からものすごく伸びた。これにはもちろん、Skate Canada(※原文も英語表記。カナダスケート連盟のことのようです)の支持と、さまざまな政治的局面が大きな役割を果たしてます。でもとにかく、いま彼はとても良い滑りをするし、尊敬に値します。フリープログラムでは彼にものすごいプレッシャーがかかっていた。自分が金メダル候補であることを知っていて、それを成し遂げるのはとても大変だった。それでも彼はすべてを申し分なくやってのけた。だから僕は彼の前で帽子を脱いでこう言わなくちゃいけない。「素晴らしいよ、パトリック!バンクーバーの後、君はすごく成長したね」って。
長い間、男子シングルの旗手はエフゲーニー・プルシェンコだった。そして今度はパトリック・チャンが現れた。でも、僕たちは彼に手が届くよう頑張ります。全力でやりますよ。
(そのプルシェンコは復帰するつもりですよ)
はい、彼とそのことについて話しました。彼をとても良く理解できるとも言えるし、まったく理解できないとも言えます。彼にとってフィギュアスケートとは、激情であり挑戦。彼は挑戦を愛していて、何かを自分自身に証明することを愛しています。彼は長年それをやってきたんです。僕個人としては、プルシェンコ以上のスケーターのスト―リーを見つけるのは難しいですね。昔のフィギュアスケートはこんなじゃなかった。今は、はるかに大きな力を要求されるし、すごく骨の折れるものになって、長期間コンディションを保つのはとても大変です。でも、エフゲーニーを見てください。ソルトレイクで銀、トリノで金、そしてバンクーバーでもうひとつ銀を獲った。少なくとも8年間、トップの中のトップでなければできないことです。可能なものをすべて勝ち取って、それでも復帰してソチに出場する理由なんてあるかな。でも、もし彼が自分のためだけにそうするのなら、とても良く理解できます。彼にはアドレナリンが必要なんです。試合を愛してるんですよ。
彼は、自分が手を出したスポーツなら、どんなスポーツでも上手いんです。例えば、僕はけっこう、いや、かなり卓球が上手い方だと思ってるんだけど、プルシェンコはその僕を文字通り卓球台から運び去ってしまった。まったく勝ち目はなかった。一緒にサッカーをやったこともあるけど、ボールさばきが上手くて、すごくボールと同調していてびっくりしたよ。彼はスーパースターになるために生まれてきた人ですね。もし復帰してきて、ソチでメダルを獲ったら、フィギュアスケートの歴史を書き換えることになります。大記録になりますよ。
(中略)
(4月半ばにプラハで行われたショーのことを話してもらえますか)
僕にとって何か特別なものでした。シーズン中にショーに出演することはあまりないんです。でも、今回の場合は断れませんでした。僕はチェコで最強のスケーターですからね。まぁ、今回の世界選手権の結果は、それを証明してないけど(笑)。プルシェンコがこのショーのトップスターで、僕が2番でした。エフゲーニーと一緒に時間を過ごすのは楽しかった。彼と一緒にリンクへ出るのが好きなんです。試合じゃないときは特にね。ジャンプのことでちょっと助けてほしいってお願いしたら、引き受けてくれた。親切にしてもらいました。
(チェコでは、トマシュ・ベルネルのショーという名前で報道されたとか?)
マネージャーとスポンサーが企画したことで、僕はまったく何もしてません。どのスケーターを招待するかのアドバイスをしただけ。素晴らしい参加メンバーを集めることができました。ジョニー・ウィアーや、申雪/趙宏博や、サーシャ・コーエンや、たくさんのスターたち。そして言うまでもなくエフゲーニー・プルシェンコ。たぶん世界で唯一、たった一人で会場を満員にできるスケーターです。
あれがトマシュ・ベルネルのショーだと言いきることはできなかったでしょうね。でも、いつか自分でそういうものを企画できたら幸せです。
(終)
<原文>
http://winter.sport-express.ru/figureskating/reviews/13618/
- 関連記事
-
- ベルネル<プルシェンコを2度、信じなかった(下)> (2016/02/13)
- ベルネル<プルシェンコを2度、信じなかった(上)> (2016/02/13)
- <僕のストーリーはまだ終わっていない>トマシュ・ベルネル (2011/05/07)