<神のように滑りたい(下)>アルトゥール・ガチンスキー
― 自分はどんな性格?
いい性格ですよ、すごくバランスが取れていて(穏やかで)。
― 名字をヒルからガチンスキーに変えたのは、舞台的なイメージのためというのは本当ですか?
全然そうじゃありません。以前は母方のヒル姓で出場していました。ただ母が結婚したときに、父が自分のガチンスキー姓を名乗るように望んだんです。(※ご両親は彼が小さい時にすでに離婚していて、後にお母さんが別の人と再婚されたのだと思われます)
― 歌手のエドゥアルド・ヒルの音楽を使った、「二人のヒル」というエキシビションナンバーまでありましたよね?
僕たちはいちど一緒に出演したことがあって、そのとき司会者が「舞台上にはエドゥアルド・ヒル、氷上にはアルトゥール・ヒルがいます」と言ったんです。きっとそこで僕が彼の遠い親せきだという話になったんです。
― お母さんはあなたの試合を観に来ますか?
いいえ、ママが観客席にいると緊張してしまうので。家に帰ってから「あそこはそうじゃなかった」と言われる方がいいです。もちろん、ママは技術的なことには口出ししませんが、振り付けについては、僕がぎこちなく見えた部分を美術家として助言することができます。
― あなたのグループにはロシア人振付師と外国人振付師とがいましたが、その違いを話して頂けますか?
ロシア人の振付師は、元々バレエの世界にいた人たちです。スケート靴で立つことはできなくて、何らかのアイデアを出してくれるだけです。それを自分でやってみて、氷の上で形にするんです。一方、2年前の僕のショートプログラム、「ミスター&ミセス・スミス」のタンゴを作ってくれたカナダのトム・ディクソンは、アイデアを出すだけではなく、どうすればいいのかを実際にやってみせてくれました。ディクソンは演出家でもあり、どういうリズムで滑走するべきか、なめらかにとか、速くとかを説明してくれました。彼と仕事をするのはとても面白く、またとても大変でした。これからも共同作業を続けていくかどうかは分かりません。
― 今のフィギュアスケート界で、プログラムや動きに感動させられるような選手はいますか?
いいえ、憧れの選手はいません。
― パトリック・チャンは?
良いスケーターです。彼のプログラムは「トランジション」、つまりつなぎのエレメンツが豊富で、それに、氷の上をとてもなめらかに滑ります。でも、例えば、彼が滑走中に小さくぴょんと跳びあがることが「トランジション」と呼ばれるのには賛成できません。この考え方は僕にとって、小さいジャンプを跳んで次へ進んだというよりは、“千鳥足”のフェイントのステップを踏むこと、左右の足を入れ替えること、そして、他のエレメンツの力を借りてスピードを出すようなエッジ操作をすることを意味します。(※残念ながらたいへん怪しい訳なので、文字色を変えています)。
と同時に、チャンの4回転ジャンプのトライアルは素晴らしいです。“千鳥足”ステップをやって、スリーターンをやって、4回転をやるというのは、ハイレベルだし、本当にクールです。もしかすると、感動的なステップのやり方かもしれません。ショートプログラムで彼のステップを見たとき、(リンクの)半分を片足で軽々と、まるで息をするように自然に滑っていました。これは感動的でした。彼はとてもたくさん練習しているのだと思います。エレメンツの一つひとつをね。チャンは神のように滑るという目標を自分自身に課しました。そして、それがうまく行っているんです。
― あなたも神のように滑りたい?
もちろん、それが僕の一番の目標です。
(終)
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