<前世はロシア人(上)>ジョニー・ウィアー
次元はちょっと違いますが、ジョニーの反対の例として
"西側"で高評価を受けながら国内では急速に人気を失った
ゴルバチョフ元大統領のことを思い出したりもしました。
さて、私も日本語がヘンになるぐらい勉強…できるのか??
2010年5月14日
文章:ボリス・オシキン
写真:ナタリー・チャイキ
僕は前世でロシア人だった
「予言者は自分の祖国にはいない(※1)」。我々がバンクーバー五輪の不出来を見て、頭に灰を振りかけ(悲嘆にくれ※2)、ロシアのスポーツの「徹底的に、その後に…(※3)」の原理に則った相変わらずの改革をこぞって非難しているこの時、ロシアのコーチとスポーツマネージャーには学ぶべきものがあると考えている人物がいる。アメリカのフィギュアスケーター、ジョニー・ウィアーだ。
…もしかすると、彼は偏っていると非難する人がいるかもしれない。なにしろ、ウィアーのロシアへの愛は世界的に知られている。その上ジョニーはロシア語を流暢に話すし、実際に訛りも無い。もしやこの愛は、血の声であり、祖先の呼びかけなのだろうか?
まず文字を覚えた
― あなたがロシア語とロシア文化に興味を持っていることについて、多くの推測がなされています。その中で、あなたの祖先はロシア人だったか、少なくとも帝政ロシアからアメリカへ来たのだと言われていますが、これは本当なのでしょうか?
いいえ。僕の祖先はノルウェー人の血を引いていて、ロシアの血はまったく入っていません。でも、たぶん、前世で僕はロシア人だったんですよ(笑)。
― (ロシア語に)興味を持ったのは、1994年のオリンピックでオクサナ・バイウルの滑りを見て、フィギュアスケーターになろうと決めてからのことですか?
もっと早かったです。子どもの頃にもう自分でロシア語のアルファベットを覚えました。最初は文字の形(書き方)だけですが。当然、その時はまだ意味は分かっていませんでした。でも、すでにロシアには興味を持っていたんです。
― ロシア語で頻繁に会話しているのですか?
トレーニングの時は、事実上、一日中です。しかもアメリカでですよ!コーチのガリーナ・ズミエフスカヤ、ヴィクトル・ペトレンコ、そしてチームの他のメンバーたちとロシア語で話しています。僕は一日中ロシア語の話し声を聞いているわけです。それに、ロシアの歌も聴きます。自分のロシア語力を向上させるためにね。実は、それで母国語の英語の発音が変になるんです。毎晩ママに電話するんですが、ママが腹を立てるんですよ。「あなた、ガリーナみたいな喋り方よ。気をつけなさい!」って。
僕は街全体に育てられている子どもみたいなもの
― ロシアのフィギュアスケート教育は、他とはどこが違うのでしょうか?
あなた方ロシアの教習システムには本質的な特性があります。とても厳格なシステムで、ロシアの生徒の生活はあらゆる側面において厳格な監督(世話)の下にあります。ロシアの生徒はもっぱらスポーツ選手として人生を送ります。それと同時に、コーチは選手に敬意をもって接しています。そして、ロシアでトレーニングをしている子どもたちは自分のコーチを尊敬しています。これはアメリカでの習慣とはぜんぜん違います。
― あなた自身、その経験をされたわけですか?
ええ、そうです。まるで街全体がひとりの子どもを育てているような感じですね。僕たは一緒に仕事をする完全なチームです。コーチ、振付師のニーナ・ペトレンコ、ドクター、マッサージ師、フィジカルトレーナー、それに歯医者まで、全員ロシア人です。
「プーティン」という料理を食べながら
― それでもやはり、ロシアやロシアのありとあらゆるものへの愛を公言するのは、奇行なのではありませんか?例えば昨シーズン、あなたが本物の毛皮で縁取られた衣装を着て滑ったことで、動物愛護活動家たちが腹を立て、スキャンダルが起こりましたよね…
いいえ、奇行でありません。僕は本物の毛皮が好きなのに、どうしてやめなくちゃいけいないんですか?
― では、ミニスカートにハイヒールのフォトセッションもやめるつもりはありませんか?あと、「キスアンドクライ」の薔薇の冠は?バンクーバーのフリープログラムの後にかぶっていましたよね。
繰り返しますが、僕にとって奇行ではありません。大切なのは、自分が満足できる行動をすることです。あの薔薇は、僕がちょうどリンクから上がった時に日本のファンがプレゼントしてくれたものです。彼女は、大きな大会ではいつも僕の頭に花を載せてくれるんですよ。それから、フォトセッションの方には、モデルの服を選ぶ人がいつもいます。その彼がある時、ふざけて僕にミニスカートと、ナイフのようなかかとの靴を履かせたんです。僕はそれを気に入りました。斬新なものが好きなんですよ。
― しかし、その「新しい経験」への愛ゆえに、カナダのフランス語テレビ局のコメンテーターはバンクーバー五輪での演技後、あなたに「性別判定テスト」を実施するべきだと発言し…ところで、その件についてあなたは、レストランで「プーティン」という料理を一緒に食べれば誤解が解けただろうにと答えましたね。一体どんな食べ物なのですか?
まさにそのフランス系カナダ人のスペシャル料理なんですよ。チーズを使ったポテト料理で、ソースがかかっているんです。ものすごくお腹一杯になるので、それを食べた後で悪口を言い合う気なんて起こりませんよ。
(続く)
※1:新約聖書より「預言者は自分の故郷では歓迎されない」
人間は自分のすぐ隣にある才能や真実の言葉を信じない、
真実や智慧は近くではなくどこか遠くで生まれる、の意
(参考:http://www.bibliotekar.ru/encSlov/13/216.htm)
※2:「ユダヤ人が悲しい時に頭に灰を振りかけた」という聖書の故事より
※3:ソ連の旧国歌の歌詞より「До основанья, а затем」
<原文・写真>
http://www.vppress.ru/tops/djonni-veyr-v-proshloy-jizni-ya-byl-russkim-7424
<自習メモ>
проро'к 予言者
Нет пророка в своем отечестве.
посы'пать 少量振りかける
пе'пел 灰、あく
посы'пать пе'плом го'лову:(文・時に皮肉)悲嘆にくれる
очередно'й 当面の/定期の/相変わらずの
бе'гло すらすらと、流ちょうに
бе'гать
зов 呼びかけ、呼び声
пре'док 先祖
сперва' 初めのうちは、まず最初に
суще'ственно 本質的に
начерта'ния 形、輪郭/(文字の)書き方
черта' 線
призна'юсь (挿)(口)本当のところ、実は
кове'ркать 歪める/ヘンてこに発音する
верте'ть 回転させる
возмуща'ть 憤慨させる
возмути'ть (同上不完了体)
мути'ть 濁らせる/曇らせる/扇動する
Смотри ты у меня! (おどかしの言葉)気をつけろよ、甘く見るなよ
сло'вно まるで~のように
присмо'тр 監督、世話
стомато'лог 歯医者、口腔科医
ми'ска 鉢、深皿
под названием《…》 …という名の
эпата'ж 常軌を逸した振る舞い、奇行
хотя бы =даже есль бы/например/по краиней мере/хорошо бы
активи'ст (ある集団の)活動分子
опу'шка (外套などの)毛皮の縁
опуши'ть 柔毛でおおう/毛皮の縁をつける
пух 柔毛、綿毛、うぶ毛
пышный ふかふかした/華麗な
шпи'лька ヘアピン/極細ヒール
шпи'ль 尖塔/長釘 (spile:栓、杭、差し管)
каблу'к (靴の)かかと
стиле'т 短刀
вено'к 花輪、花冠
вене'ц 冠
вить よる、なう、編む
преподнести' うやうやしく捧げる、贈呈する
водружа'ть (雅)(高いところに)据え付ける
облачи'ть (宗)祭服を着せる/(旧文・おどけて)着せる
новизна' 新しさ、斬新さ
недоразуме'ние 誤解、手違い/相互理解の不足、いさかい
подли'вка ソース、ドレッシング
сы'тный 腹を一杯にする、栄養たっぷりの
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