<プルシェンコは金メダルを勝ち取った!>タチヤナ・タラソワ
実は、タラソワコーチの女子に関する発言については
これまであまり翻訳しないようにしてきました。
誤訳した場合の影響力の大きさ等を考えると、恐かったので。
でも、今回の五輪の「得点」にはどうしても納得がいきませんし
私と同じ気持ちの方もたくさんいらっしゃると思うので
どうしてもこのインタビューをご紹介したくなりました。
2010年3月1日
S.プリャヒン
プルシェンコは金メダルを勝ち取った!
(略:トリノ五輪との比較、アイスダンス・ペアについて)
<<ライサチェクは練習の虫>>
― アイスダンスの試合後、ロシアフィギュアスケート連盟のワレンチン・ピセーエフ会長が、我が国の若者たちはあまり働かない(練習しない)と不満を漏らしました。その一方で、オリンピック3連覇を果たしたあなたの教え子、イリーナ・ロドニナは、働きが足りないのは連盟の幹部の方で、国際的にまったく威信がないと考えています。
威信に関しては、「ロシア館」(※次期ソチ五輪の紹介を兼ねて、バンクーバーに設置されたパビリオン。ロシア料理、音楽、映画などが楽しめるほか、川口悠子選手のサイン会もここで行われたそうです)を3時間も見れば、その心配は無いとわかります。具体的に言うと、フィギュアスケートにはISUメンバーのアレクサンドル・ラケルニクと、技術委員のアレクサンドル・ゴルシコフがいます。影響力は持っているのです。ですから、私はイリーナの意見には賛同しません。状況が悪いときに誰かを打ちのめしてはいけません。ましてや身内なのですから。私が思うに、彼女は自分で連盟の指揮を執りたいだけでしょう。でも、私はこの4年間、試合で一度も彼女の姿を見ていませんよ。
― エフゲーニー・プルシェンコの発言からも、彼が連盟の支えを感じておらず、それ無くしてはフィギュアスケートでメダルを獲るのは非常に困難だということが伺えますが。
ジェーニャは、何かが変わる前に「埋められて」しまったのです。ショートプログラムの中にね。私の見たところでは、彼は4~5点差をつけてリードするべきでした。ショートプログラムは、テクニカルプログラムです。そして、「4回転-3回転」はあらゆるもの(状況)を一気に変えます。他者よりも出来る(能力が高い)ことを示すものです。フリープログラムの方では、プルシェンコは有罪判決を受けませんでした。そこには連盟の努力もあったのです(編集注:先にワレンチン・ピセーエフは、次のように発言している。「プルシェンコのショートプログラムの要素点に対し、我々の仲間のひとりが激しい憤りをあらわにした」)。ピセーエフとは様々な点で矛盾する(複雑な)関係にありますが、私は次のように言いましょう。彼はフィギュアスケートを知っていて、愛していて、彼無しでは大きな大会はひとつもできません。
― あなたの教え子のヤグディンは、4回転ジャンプを跳んでオリンピックチャンピオンになりました。あれから8年が経ち、もう跳ぶ必要はなくなりました。これにはがっかりではありませんか?
がっかりですとも!これは大きな後退です!すでに1994年のオリンピックで、ウルマノフが4回転ジャンプを入れてチャンピオンになっているのですよ(※実際は、ウルマノフが4回転を跳んだのは'92アルベールビルで、'94リレハンメルでは跳んでいないそうです。Eriさん情報ありがとうございます!)。男子シングルを「好き嫌い」の原理でジャッジしてはいけません。そういう種目はすでにあるのですから。アイスダンスのことです。ダンスでは、最終的にどの組が何位になるのか、前もって分かっています。
― 昨年、あなたはライサチェクにショートとフリー、両方のプログラムを作りましたね。彼はスポーツ選手としてどうですか?
優秀です。ワーカホリック(練習の虫)です。とても素晴らしい、立派な人間です。本物のアスリートで…
― …そして、4回転を跳ばない。
彼も跳んでいたんですよ。でも、きっちり4回まわり切ってはいませんでした。背の高さが障害になったのです。現在のルールでは、回転不足は大きなマイナスになります。だから彼は、クリーンな3回転を跳ぶことに集中しようと決めたのです。それがこのオリンピックでうまく行ったわけです。
<<もう4回転では選手のモチベーションは上がらない>>
― プルシェンコはフリープログラムで負けたと、公平に見てそう思われますか?
ええ。でも、ショートの得点で金メダルを取るはずでした。
― プルシェンコも同じことを言っていたという報道がいくつかありました。
私はジェーニャからそういう言葉は聞いていませんし、判断できません。ただ、これだけは言いましょう。選手がやるべきことは、滑ることと耐えることです。周囲の人間がやるべきことは、その努力が無駄にならないように気を配ることです。
今のルールでは、跳べば靭帯や骨が「飛んで行く」4回転ジャンプは必要ないのです。ですから、このジャンプで選手たちのモチベーションを上げるのは、実際のところ不可能です。カナダ人(編集注:パトリック・チャンのことだと思われる)のように腕を振り回して、リンクの端から端まであくせく動き回る方がずっと良いのです。自分のぴかぴかのスケーティングを見せびらかしながらね。
― ロシアではすでに「採点システムを変更するべきだ」という声があがっています。今のシステムは、難易度で我々に勝てない北米のために考案されたものだと。変更する必要はありますか?もし必要ならどのように?4回転の得点を増やすべきですか?
はい。エレメンツを正しく評価する必要があります。男子が3回転を跳ぶのは、女子よりもはるかに易しいことです。ですから、女子の2回転から3回転への得点の「跳躍」(※得点差)をもっと大きくするべきです。なぜこのことを技術委員会は理解できないのでしょうか?男子の4回転にも同じことが言えます。これについては戦わなければなりません。
― 結局のところ、連盟の畑に石を投げる(※遠回しに苦情を言う)ことになるのでしょうか?もしくは、誰が戦うべきでしょうか?
フィギュアスケートの発展に無関心ではない人、全員が戦うべきです。技術委員会に入るべきなのは、様々な国や様々な種目のコーチたちであって、休みの日にだけフィギュアスケートに関わるおじさんやおばさんたちではありません。彼らは私たち専門家に対して、ある種の狂気じみたルールの元で仕事をするよう提案してきます。ダンスのルールの複雑さ(手の込みよう、不可解さ)と言ったら、もうつばを吐きたくなるぐらい!その一方、男女シングルで起こっているのは、ただのでたらめ(混乱、無秩序)です。
4回転を習得するためには、健康のことは言うまでもなく、どれほどの力と時間が必要か。私はコーチなので知っています。これをやっているアスリートは世界で一握りしかいません!3回転ができる選手なら何千人もいます。12歳の女の子も跳んでいます!この違いがわかりますか?私の教え子の浅田真央のプログラムには、トリプルアクセルが2本入っていました。これについては彼女に心から感謝しています!ライサチェクと同じ本数ですよ!
なぜ難度や希少性を評価しないのでしょうか?公平性はどこにあるのでしょうか?スポーツとは公平性の極致でしょ。より速く、より高く、より強い者こそが勝者なのです。
(略:ソチ五輪の展望等)
<原文>
http://www.sovsport.ru/gazeta/article-item/373557
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