<素晴らしいプログラムになるでしょう(下)>グリュッター
あれから8年が経ってもう忘れかけていたとはいえ
やはり私の中で小さくくすぶり続けていたものが
グリュッターコーチのおかげでようやくスッキリした気分です。
そして、ランビエルの『椿姫』!
個人的にとても思い入れのある曲なのですごく楽しみ。
ヨーロッパ選手権が待ち遠しくてたまりません。
あ、その前に、全カナダと全米も!!
― では、何かをする必要がありますよね。現状をどうにかして変えようとしたことはおありですか?
試みましたよ。私はラケルニク氏に言いました。ステファンが6分間練習の最初にレベル1のスピンー まず高速のシットスピン、次にアップライトスピン ーをすると、みんなが拍手をする。ところが、レベル4のスピンをしても誰も反応しない、とね。スイスにはルシンダ・ルーという素晴らしいスピンをする傑出したスケーターがいました。彼女のスピンへの評価は、今ならおそらくレベル2でしょう。しかし彼女は世界一のスピナーでした。現在、ジャッジたちは、選手やプログラムの比較をすることなく、ただ得点を付けざるを得ません。しかし私は比較したいのです!そうすれば、こっちのスピンの方が良い、こっちの方が高い点数がつくべきだと言えるでしょう。これは論理的なことです。
― 彼らはジャッジの偏見を恐れているのかもしれません。
だからこそ、審判団の構成員があんなに多いのです。仮に1人か2人の審判が先入観を持っているとすると、別の2人の審判は反対方向にひいきをするでしょう。私は、旧システムの枠組みで行われていた採点はそれほど不公平ではなかったし、結果もそれほど間違っていなかったと思っています。ソルトレイクシティのスキャンダルを煽ったのはマスコミです。当時の判定は5対4でしたが、ロシアペアのプログラムの方が難しく、カナダペアはというと、良い演技ではありましたが、非常に易しくて両足滑走の多いものでした。そこから遡ること1年前のカナダ(編集注:2001年の世界選手権)で、カナダペアの方がかなり易しいプログラムだったにも関わらず優勝したとき、ロシアペアは文句を言いませんでした。彼らはただその判定に従ったのです。スキャンダルは全てジャーナリストたちによって煽り立てられたものです。彼らは新聞を売り、発行部数を伸ばす必要があったからです。
― しかし旧システムでは、選手たちは互いにそれこそ比較されていましたよね。今でも多くの人々が、カナダペアが勝つべきだったと考えています。なぜなら、カナダペアはノーミスの演技を行い、アントン・シハルリドゼの方はダブルアクセルの着地でミスをしたからです。観客にはどちらのプログラムの方が難しいのか分かりませんでした。しかし新システムには、少なくとも、行われた要素の基礎点と質の評価(GOE)が書かれたリストがあります。
仮に9人か11人のジャッジがいるとして、その内4人がノーミスの演技を選び、残りのメンバーは、ミスがあっても難しい方のプログラムを選んだとしましょう。こういう採点結果なら私は認めます。もしも5人が、易しくてもノーミスの演技を選び、逆の結果になったとしてもです。しかし、スキャンダルは認めません。
― あなたの生徒のプログラムについて、あと2つ、3つ質問させてください。最近のインタビューの中で、あなたはタンゴが気に入らない、フリープログラムを変更したいと仰っていましたね。
気に入らないとは言っていません。オリンピック・プログラムではないと言ったのです。オリンピックのためのプログラムは、人々の記憶に残る、特別なものでなければなりません。例えば、織田信成のチャーリー・チャップリンや、高橋大輔のラ・ストラーダの音楽のような。ゼブラの縞模様の衣装を着て演じた、トリノオリンピックの『四季』も記憶に残っています。今のフリーは本当にとても良いタンゴですが、記憶には残りません。ステファンがタンゴを続行したのは、昨年一年間ずっとショーで滑っていたし、彼が生まれつき持っているものだからです。オリンピックのためには何か別のものが必要になります。オーベルストドルフで多くの人々が私に言いました。「フリーは良いプログラムだが、ショートの方が強い」と。強い方のプログラムから始めるのは正しいことではありません。だからオリンピックではタンゴを続行したくなかったのです。
― すでに何らかのプランやアイデアはあるのですか?
すでにプログラムもありますよ。でも、それについては話したくありません。プログラムはもう出来ていて、ステファンは毎日トレーニングでそれを滑っています。はじめにタンゴ、次にショートプログラム、それから新しいフリープログラムを、今のところジャンプなしで。これは素晴らしいプログラムになるでしょう。人々の記憶に残るだろうと思います。そして、多くの人々がこの音楽を気に入ってくれると期待しています。私たちは『シェヘラザード』を選ぶ可能性もありました。最初に考えたのはその曲でした。観客はだいたいオリエンタルなメロディーを好みますから。しかし、エヴァン・ライサチェクのフリープログラムが同じテーマである以上、『シェヘラザード』が2つになるべきではないと思いました
― 私たちは、新しいフリープログラムがすでに準備されているとは知らず、ヨーロッパ選手権までに何かを変える時間があまりないことを心配していました。
もうすぐ新フリープログラムに全部のジャンプを入れて滑ってみます。もし具合が悪いとなれば、当然ステファンはタリンでタンゴを滑ると言うでしょうが、私はそうならないことを願っています。
2010年の年明け、ステファン・ランビエルは次のように公式発表した。タリンのヨーロッパ選手権では、ヴェルディのオペラ『椿姫』の音楽に乗せたフリープログラムを披露すると。
(終)
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