アルトゥニアン＜ザギトワのどこがハニュウに及ばないというのか？(4)＞

《コーチは養育者》

　―　ウラジーミル・ポズネルのインタビュー（※ロシア第１チャンネルのインタビュー番組）でトゥトベリーゼコーチは、若いスケーターたちと仕事をする上で問題となる別の側面を示しました。それは、大きな勝ちをおさめた後もまるでどんな勝利もなかったかのように練習し続ける準備は、すべての選手にできているわけではないということです。

　おそらく彼女は自分が何を話しているかわかっているでしょう。私が同じような状況にぶつかったときは、別の方向からアプローチします。選手の友人や母親に電話をしたり、あるいは、たとえば製氷作業員にお願いして「君はすごい、何もかも素晴らしい」と声をかけてもらうんです。そんなことをしても効果がないなんてどうやってわかるのですか？　選手がモチベーションを失っていたら正しい言葉を選び出すのがコーチの任務です。

　そうそう、モチベーションとキャリアの継続とスター選手の問題でしたね。例えて言うなら、私はお気に入りの高価な陶磁器のカップでお茶を飲みたいし、それを自分の息子や孫に手渡したいし、使い捨ての容器には我慢できないということです。新しい選手が現れる。それは何を変えるのか。私たちは選手のユーザーなのかコーチなのか。私たちはまず第一に養育者であり、私たちには責任があるのです。

　―　いまの最後の言葉は、いかにも典型的なロシアのコーチらしいと、おそらくアメリカやカナダでは受け止められるかと…

　だから私は彼らに勝つのかもしれませんよ？（微笑）　多くの人が単にお金を稼ぐために来ています。私の場合はロシアでもアメリカでも、そういう問題は起こりませんでした。私は単にハイクラスのスケーターを養育するコーチです。教え子たちが私を慕い、引退後も良い関係でいてくれることをうれしく思います。ロシアにいた頃の私はもっとひどかった。

　―もっと厳しかったのですか。

　もっとモチベーションがありました。今はモチベーションは減った代わりにプロフェッショナリズムと、選手の頑張りに対する敬意が加わりました。

《プロのプリマのような女子選手が必要》

　―技術面に優れた若い女子選手たちに関して、あなたはどういう立場をとられますか。2～3年で全選手に勝って、引退する権利を十分に持って、新しい人生を始めるような。

　それは選手たちそれぞれの選択であり、私たちにできるのはアドバイスすることだけです。そう、ネイサンは名門のイェール大学で学んでいますが、教授たちは彼に対して私と同じ不満を持っているでしょう。だからいい滑りをして、勉強もすることになります。いい加減なことは誰も許してくれません。グランプリファイナルのフリープログラムの前日、彼はリンク正面のラウンジゾーンで4～5時間、数学の課題をやっていました。このあと試験にパスして、それから全米選手権です。

　年齢の話に戻ると、これはロシアだけの問題ではなく、グローバルな問題です。タラ・リピンスキーを思い出してください。14歳でオリンピックを制して、引退しました。私はどちらの味方でもありません。いったいどこから15歳という数字が出てきたのでしょうか。格闘技、あるいはホッケーの15歳の選手を想像できますか。ひねりつぶされてしまいますよ。私はこのフィギュアスケートという競技に、バレリーナのように正しく食事をして、練習して、自分の身体の変化を見守り、プリマであり続けるようなプロフェッショナルな女子選手がいてくれたらいいのにと思っています。時間をかければ、皆がそこまで成熟できると信じています。

　―　あなたの見方に反する例として、カミラ・ワリエワとアリョーナ・コストルナヤを挙げることができます。すでに高難度のジャンプと美しいスケーティングを兼ね備えています。

　好みは人それぞれです。誰の方が優れているかについては非常に議論の余地がある。それを敢えてしないことが重要です。なぜ誰も私が反対しているのではなく、逆にトゥルソワとシェルバコワを守りたがっていると思わないのでしょうか。ここでちょっとリプニツカヤ、ラジオノワ、ポゴリラヤ、ザギトワ、メドベージェワ、トゥクタミシェワ、そしてツルスカヤが出場している試合を想像してみてください！　いったいどんなレベルの戦いになっていたか！　年齢とともに彼女たちは技術を完璧なところまで磨き、身体能力を理想的な状態に持ってくることができたでしょう。そしてその妙技で私たちを喜ばせてくれたでしょう。そう、文字どおり何千ものファンに追いかけられるユヅルのように！

　（つづく）