<両親は私の決意に賛同してくれた(下)>川口悠子
ISUの英字表記も「KAWAGUCHI」→「KAVAGUTI」に変更されました。
ロシア人として初めての国際試合まであと10日。
メダル獲得に向けて 「ダヴァイ、カヴァグーチー!!」
橋が上がって 朝まで歩き回るはめに
― 日本に住んでいた時は、北海道や沖縄で休暇を過ごされていたのですか?
いいえ、私の覚えている限りでは、いつも勉強とトレーニングのスケジュールで一杯でした。ピーチェル(※ペテルブルクのこと)に住むようになってからも、シャシュリク(※串焼肉)を食べに街の外へ出たことすらありません。沖縄は、日本人も絶賛するリゾート地ですが、私は一度も行ったことがないんです。北海道へは小さいときに両親と行きました。でも夏だったので雪は見ていないんですよ。私が日本でいちばん好きな街は京都ですね。日本の古い都で、昔の異国情緒がよく残っているんです。
他の国なら、南フランスのニースとその近郊がとても好きです。モダンな建築物が海辺の風景に見事に溶け込んでいます。
ペテルブルクもとても美しい街です。エルミタージュやその他の美術館、劇場へは何度も行きました。珍しい物がいろいろありますよね。例えば、今はもう知ってるんですけど、ネヴァ河の橋って「跳ね橋」になってるでしょ。ある日(※橋が跳ね上がる時間に)遅れてしまって、朝まで歩きまわるはめになったことがありました。
逆に、ペテルブルクで好きじゃないものもあります。それは大量の落書きです。景観が台無しです。日本ではこの種の“芸術家”には警察が厳しく対処するので、落書きは少ないんですよ。
― もし日本人がペテルブルクへやって来たら、まずどこへ案内しますか?
父と母が来たときは、私の練習リズムを崩さないように気を遣ってくれたんです。ペテルブルクのどこに面白いものがあるかを自分たちで調べて、自分たちで観光してくれました。その印象については、後になってからお互いに語り合ったと思います。近郊のペテルゴルフや、パヴロフスク、プーシキンへも自分たちだけで行ったらしく、どの街もとても気に入ったそうです。両親がとても熱心に語るので、私も行ってきたんですよ。実際にとても美しい場所でした。特に「琥珀の間」(※プーシキン市のエカテリーナ宮殿の中にある)が気に入りました。
車の運転はしたことがない
― 北の都(※ペテルブルクのこと)での移動方法をどうやってマスターしたのですか? だって日本では右側通行(※どうやら“向かって右”ということのようです)でしょ。
びっくりされると思いますが、私はこれまで一度も車の運転をしたことがないんです。ロシアでも、日本でもね。運転免許は未だに持っていません。ピーチェルでは、東京にいたときと同じように地下鉄でトレーニングに通っていて、それで十分満足しています。サーシャ・スミルノフも運転免許を持っていなくて、そのことを最近知って驚きました。
でも、これには理由があるんですよ。私たちはしょっちゅう世界中を旅しているので、一年のうちの大部分は車を放ったらかしておくことになるんです。ピーチェルのひどい交通渋滞のことを考えれば、今の私たちのリズムに車は必要ありません。それに、私は最近まで大学の勉強に多くの時間を取られていましたし。
― 地下鉄であなたに気づく人はいますか?
サインを求められたことはないですね。
― 大学では何を専攻されていたのですか?
“国際外交”です。ロシア語で授業を受けました。もちろん、今すぐこの専門分野の職に就くことはできませんが、この先そうならないとは限りませんよ。あるいは、ロシアか日本でコーチになるかもしれません。
日本人と結婚する方が有利
― ロシア人男性と結婚する可能性は?
今はスポーツでの成功を目指しているので、あくまでも仮説ということになりますが、実利的な観点から言えば日本人と結婚する方が有利でしょうね。日本国籍を再取得しやすくなりますから。というのは、将来はやっぱりロシアよりも日本での方が働きやすいと思うからです。
でも、人生の行いがすべて実利的な判断によって成されるわけではありません。仮にロシア人と結婚しても、日本で働くかもしれませんし。ロシア大使館や、ロシアの企業で働く可能性も捨てないでおきましょう。
― あなたの夫になる人は、あなたのどんなところを喜んでくれると思いますか? 料理の腕とか?
私のライフスタイルだとカフェやレストランで食事をすることの方が多くなりますが、台所に立てば、ロシア料理も日本料理も作ることができます。もちろん、プロの調理師が作るような特別な料理ではありません。とてもシンプルだけれど、健康的な生活を送れるように考えた料理です。
― アルコールの方はどうですか? シーズンが終わったら飲めるんでしょうか?
終わらなくても飲めますよ!(微笑)ロシアでは、何かを記念して祝うイベントがよく行われます。大きな試合が迫っていなければ、私もお祝いをするんですよ。でも、もちろん、量は心得ています。
(終)
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