<プルシェンコには今なおライバルがいない(下)>アレクサンドル・ズーリン
モスクヴィナコーチが見つけた物が何なのかが
さっぱりわかりませんでした。
モスクヴィナとワシリエフは ペアから最大限のものを引き出している
― 昨年、あなたはムホルトワ&トランコフの進歩を強調しながらも、川口&スミルノフのプログラムの方が好きだと仰っていましたね。今シーズンはいかがですか?
今年のショートは、ムホルトワ&トランコフのプログラムの方が断然好きだ。本当に強いプログラムだよ。彼らのフリープログラムのアイデアも気に入っている。残念ながら、それをクリーンに滑る準備が今のところできていないが。
― プログラムが難しいということを、彼らは繰り返し(※見せて?言って?)ていますね。
難しいのさ。なによりもまず芝居がかっている(※わざとらしい)。でも、とても興味深いプログラムだ。
タマーラ・ニコラエヴナ(筆者注:カワグチ&スミルノフのコーチ、モスクヴィナのこと)はまた何かを見つけたようだ… мулечки(※騾馬??)やкорочки(※樹皮、かさぶた、スケール??)やфишечки(※チップ、魚??)のようなものを。でも、これがモスクヴィナだ(?)…フリープログラムでは、彼女の教え子たちの方が明らかに輝いていて強かった。それでも、もう一度繰り返すが、ムホルトワ&トランコフはもっと上手くプログラムを演じられただろう。
しかし、大事なのはこのことではなく、彼らがお互いのみならずドイツのペアとも戦うという点にある。サフチェンコ&ショルコヴィーは、ここで私を間違いなく感動させた。何よりもフリープログラムが良い。とても高度なテクニックの組み合わせで、高度な演技だった。そしてすべてがアイデアに満ちていた。明らかに技術も別次元、フィギュアスケートの解釈も別次元だ。この調子だと世界(※選手権?)では、我が国のペアはドイツペアのミスに期待するしかない。もし彼らがクリーンに滑ると、無駄な戦いになってしまう。
― でも、2008年ザグレブのヨーロッパ選手権でも、金メダル争いはほとんど無かったですよね。今回も、ショートプログラムでは我らがペアがリードしていましたし。
我が国のペアの進歩は目覚ましい。ワシリエフもモスクヴィナもとても良い仕事をしている。自分たちの教え子から最大限のものを引き出している。
― 今ロシアで一番のペアはどちらですか?
一番はない。潜在能力はどちらのペアも同じだ。ムホルトワ&トランコフの方がいくらかスケールが大きくて力強いが、その代わり、彼らのライバル(※川口&スミルノフ)の方が確実性がある。
プルシェンコにはモチベーションが必要だ
― 男子シングルのロシア人トップは7位でした。これについてはどう思われますか?
世界では14位になるだろうね。
― ヴォロノフはどうしたのでしょうか? 去年のような進歩や展望は見られませんでした。
彼は成長していない。自分の鼻より遠くは見たくない(※目先が利かない、視野が狭い)のさ。コーチや専門家たちは、彼に対して「君は2本目の4回転をプログラムに入れていない。それ無しには何も勝ち取ることはできない」と言っている。なのに彼は悠々と同じエレメンツを行っている。つまり、彼は成長したくないということだ。すべてに満足しているということだ。
― それでは、寄付金を集めて、プルシェンコに復帰を要請するべきでしょうか?
知らないよ。それは私に聞く質問じゃない。メダル争いをする力のある選手がいないというのが、私たちの抱えている問題だ。ジュベールと私とは付き合いはないが、彼こそ本物のチャンピオンだ。リンクに出ると、彼の目には優勝しか見えていない。準備ができているとかいないとか、怪我をしているとかしていないとかは、彼にとって重要なことではない。これは培われるものではなく、性格だ。プルシェンコやヤグディンもそうだった。これは個性だった。今のロシアの男子フィギュアには、こういう選手がいないと思う。
― プルシェンコ復帰の話題には、もうみんなうんざりしています。イタリアとリトアニアの選手がトリノオリンピックで現役復帰しましたが…しなかった方が良かったですよね。あなたのご記憶の中で、成功した復帰例はありますか?
何を言うんだい!? ゴルデーエワ&グリンコフの復帰劇は夢のようだった。彼らはリレハンメル五輪で勝つために戻ってきて、そしてそれを成し遂げたよ。
私が思うに、プルシェンコには今なおライバルがいない。モチベーションだけの問題だ。どうやってモチベーションを見つければ良いのか、私には想像がつかない。彼はすでにオリンピックで勝っているのだから。
バンクーバーまであとどれくらい? 1年? 基本的には耐えられるだろうね。問題はモチベーションに、資金面に、メンタル面に…どうやって1日4時間の重労働をする身体を作るか? お腹一杯食べず、眠りすぎず、ヤナ(※プルシェンコの恋人の名前)を見ず、アレクセイ・ニコラエヴィチだけを見て…
それから、リスクのことも理解しておかなければいけない。オリンピックチャンピオンの称号には「前(元)」という接頭辞はつかないが、しかし、もしかすると4位になる可能性もあり、これは非常に印象を損なう。
常にハングリーな者が勝利する。もしプルシェンコがハングリーになれば、戻ってきて、そして勝つだろう。
弊社特派員の2009年ヨーロッパ選手権への出張体制をサポートしてくださった、ロシアフィギュアスケート連盟に感謝申し上げます
(終)
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