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ザカリアン<ロシア姓はマリニンの妨げにならない(上)>

2022年10月24日
ヴィクトル・マイロフ

ロシアの姓はマリニンが米国のヒーローになることを妨げない

ザカリアンがフィギュアスケート界の超新星について語る


 ロシアでフィギュアスケートグランプリ・モスクワ大会に注目が集まっていた頃、合衆国では国際フィギュアスケート連盟によるグランプリシリーズ第1戦「スケート・アメリカ」が開催されていた。ロシア人はこの国際大会への参加を許されなかったが、それでもロシアの痕跡なしというわけにはいかなかった。

 男子シングルで優勝したのはイリヤ・マリニンで、両親はタチヤナ・マリニナとロマン・スコルニアコフ。二人ともロシア出身のフィギュアスケート選手だったが、30年前に国外へ移っている。5つの4回転ジャンプを含む傑出したパフォーマンスによって、17歳の少年はスケート・アメリカにおける歴代最年少チャンピオンとなった。いまイリヤは出場する全大会で優勝するつもりでいる。その力を信じて疑わないのは、夏から彼のエージェントを務めるアリ・ザカリアンだ。

 ザカリアンはエージェントとしてイリヤの才能のスケールをよく把握しているが、マサチューセッツでの輝かしいパフォーマンスを見たあとは、ザカリアン自身が衝撃を受けている状態だった。にもかかわらず、弊誌Metaratings.ruは氏からマリニン選手の過去、現在、未来について詳しく話を聞くことができた。このロングインタビューから次のことがわかる。

 ・スケートアメリカのマリニンのパフォーマンスが特別だった理由
 ・イリヤはアメリカでどのように受け止められているか
 ・フィギュアスケート選手としてのマリニンの特徴
 ・以前は誰も難度の高い要素を追い求めようとしなかった理由
 ・5回転ジャンプを見られるのはいつか、なぜマリニンは競技全体を変えるのか
 ・イリヤはハニュウ、チェン、プルシェンコに似ているか



「イリヤは皆のインタビューに答え、写真撮影に応じ、朝8時半にトレーニングに来て練習を始めた」

- スケートアメリカのイリヤのパフォーマンスはどうでしたか? ショートプログラムからの逆転でしたが。

 こういうものを久しぶりに見ました。フィギュアスケートが凄いスポーツであることを改めて証明してくれますね。スタンドで見ていたときの感情はうまくお伝えできません。イリヤの演技後どよめきが起こり、観客は叫び、リンクサイドへ「押し出され」ました。17歳の青年が観衆をこのような「放心状態」に至らしめた、その様子をじかに見るのは価値あることです。

- ネイサン・チェンやユヅル・ハニュウでさえ、あなたや観衆をこれほど興奮させることはなかったと?

 彼らもかつて皆を征服しました。でもマリニンの演技のときはもっとフレッシュな感情があって、観衆がこのような反応をするのはめったに見られません。

- では、アメリカのフィギュアスケート界の専門家たちの反応は?

 みんな叫んで、みんな駆け寄って写真を撮って、抱きしめて、祝福していました。イリヤの対応もとても興味深くて。すごく陽気で幸せそうでした。見ていてとても嬉しかったです。

- イリヤ本人の反応はどうでしたか。 自分の演技に衝撃を受けていましたか? それとも「自分はこれをやりたかった、それをやった、よくできた」という態度でしたか?

 後者の方です。イリヤはみんなと冗談を言って、みんなのインタビューに答えて、みんなと写真を撮っていました。そのあと休んで、朝8時30分にトレーニングにやって来て練習を始めました。きちんとしていて、感じが良くて、ポジティブで、良い子です!

- ショートプログラムは何がうまくいかなかったのですか?  4位にとどまり、トウループの転倒もありました。

 そうなってしまったんです。それに、今年のスケート・アメリカが彼の人生で初の大舞台だったことを理解する必要があります。ましてや、客席はあふれ、チケットは数カ月前に売り切れていたのですから。さらに、連邦のメインチャンネルでも放映されていました。

 本番で転んだ4回転トウループですが、練習では目をつぶっていても跳べます。時々こういうことが起こるんです。でも、フリープログラムでは全員を打ち負かすであろうことを誰も疑いませんでした。しかし、あれだけのセンセーションで…

- 今シーズンのイリヤの目標は?  スケートアメリカ後に変更がありましたか?

 彼の目標は、すべての大会で優勝できるようにすることです。目の前にグランプリ・フィンランド大会があって、その後はグランプリファイナル、国内選手権、そして日本での世界選手権があります。

- アレクサンドル・エンベルトが次のように言っていました。「マリニンはフィギュアスケートの未来であり、全選手が彼の後を追って自分のレベルを引き上げようとするだろう」と。 これに同意しますか?

 同意します。イリヤが今回バーを引き上げて宇宙的なものを披露したので、他の選手たちは違うやり方でトレーニングや練習をしなければならないでしょう。

「イリヤはまだ 17 歳。最高難度のエレメンツも、上の年齢よりも実行可能だ」

- マリニンとの出会いを教えてください。

 私たちは仕事を始めたばかりで、すべてが初期段階にあります. 彼の両親のことは90年代から知っていますが、とても良い、素晴らしい人です。イリヤについてはもう数年前からずっと見ています。ラファエル・アルトゥニアンコーチから「彼をよく見ていなさい。とても有望だよ」と言われて。

- マリニンとあなたの仕事とは?

 正直言って、私のことではなくイリヤのことをもっと話したいのですが。自分としてはかなり経験豊かだと思っています。これまでエフゲニー・プルシェンコや、イリーナ・スルツカヤや、それにカナダ人、アメリカ人など多くの外国人アスリートと仕事をしてきました。アスリートにとって重要なことを行うための、良いプラットフォームを蓄積できたと思っています。自分が持っている最高の知識とコネクションを可能な限り集中させて、イリヤとの仕事に生かせるようにします。

- イリヤは世界で初めて4回転アクセルを成功させました。これで頭打ちということはありませんか? 次はどうなりますか?

 イリヤは自分の道を歩み始めたばかりです。仕事をするのにふさわしい空気に包まれてほしいですね。彼とはすべてを最大限に、適切に行いたい。彼と一緒に仕事ができるのはとても幸せです。マリニンは非常に才能豊かな選手で、ジャンプ時の空中での回転速度が驚異的です。

- なぜマリニンは4回転アクセルを跳べて、他の人は跳べないのですか?

 先ほども言いましたが、イリヤにはとてつもない「ひねり」があり、技術的な土台がきちんとセットされています。さらに、正しい野心を持つ勝者の「肌(才能)」がすぐに見て取れます。

- なぜ彼にはとてつもない「ひねり」があるのですか?  骨格、足の動き、遺伝、何でしょうか?

 全部のワンセットです。そこにはコーチとの適切な作業も含まれます。それに彼はまだ17歳です。この年齢なら最高難度のエレメンツも、上の年齢よりも実行可能になります。すべてが適切にセットされ、良いチームのバックアップがあるなら、ウルトラCへ向かって進むには最高の時期です。

「2030年代までに5回転ジャンプが現れると思う」

- この若さで成し遂げたものとポテンシャルとを考えると、男子シングルは彼が支配する時代に入ると言えるでしょうか?

 これで終わりだ、今後はイリヤが支配する、とは言えません。この先まだたくさんやることがあります。日本の選手たちもとても強い。ユーマ・カギヤマは非常に成長しているし、ショーマ・ウノはステファン・ランビエルコーチとの練習の中で力をつけました。基本的に日本のフィギュアスケート界が、次のオリンピックまでマリニンの主要なライバルとなるでしょう。 日本の選手たちはスケーティングが素晴らしくて、非常に柔らかく、スピードがあります。

- 現時点でアメリカ国内にマリニンのライバルはいませんか?

 それを言えるのは全米選手権が終わってからです。今はイリヤが最高の最高だなどと言いたくありません。でも、10年後ぐらいには最高のスケーターの一人として、現在のハニュウ、チェン、プルシェンコ、ヤグディンのように語られることを願っています。

- マリニンは次の世界選手権の本命ですか?

 他の選手たちと同様、世界選手権の頂点に立つ可能性と力を持っています。しかし、シーズンはとても難しいものになるでしょう。ライバルたちも強いです。日本のほかにフランスやイタリアの選手も順調に成長しています。この先どうなるか見てみましょう。

- 日本の選手の中に4回転アクセルを跳べる人はいますか?

 ハニュウがそれに近かったことはみんな覚えています。イリヤが試合でこのジャンプをコンスタントに跳ぶようになれば、他の選手たちもその方向へ動き始めると思います。勝つためにはより一層磨きをかける必要が出てきますからね。

 とはいえ、4回転アクセルへの挑戦は以前からありました。まずアルトゥール・ドミトリエフが襲いかかり、いいところまで行きました。進歩を止めることはできません。このジャンプの完成は 2030 年代ぐらいだろうとみんな思っていましたが、それよりもずっと早く実現しました。

- 2022年になって4回転アクセルが成功したのはなぜですか? もっと早くにできなかった理由は何ですか?

 これがスポーツの進化です。今はテクニックも準備期間も別物になっています。例えば、2010 年のバンクーバーで4 回転ジャンプを跳んだのはプルシェンコと中国の選手だけでした。オリンピックだというのに! あれから12年が経過して、4回転を跳ばない人はほとんどいない状態です。今では「3.5回転」しか跳べていない人でも4回転にトライしています。

- 5 回転ジャンプはもうすぐですか?

 今のところ2030年代までに現れると思っています。もしかするともっと早くに。

- 成功させるために今足りないものは何ですか?

 このようなエレメントを遂行するには、自分にしっかり自信を持ち、正しい準備を行う必要があります。多回転ジャンプはやはり危険で、アスリートにとっていちばん重要なのは怪我をしないことです。マリニンが5回転を跳ぶかどうかは、コーチングスタッフの方がきちんと答えられるでしょう。私の意見では、可能です。

「マリニンは2人目のハニュウになれない。ハニュウは過去・現在・未来において唯一無二だから」

- あなたはプルシェンコをはじめ、多くの名のあるアスリートたちと仕事をしてきました。マリニンは彼らよりも才能豊かだと感じますか?

 皆それぞれに才能豊かです。プルシェンコや他の選手たちはフィギュアスケート界にそれぞれ貢献してきたので、マリニンが最も才能豊かであるとは言えません。

 ジェーニャ(・プルシェンコ)が登場したとき、彼はスーパーアスリートだとみんな理解しました。1997年、ミラノだったと思いますが、エキシビションでトリプルアクセルを7本、4回転を4本跳んだことを覚えています。あの時はみんなの目がどんどん大きく開いていって、あれは本物のステートメントでした。

 そしてハニュウです。彼もまた才能豊かで、まるで別の惑星からやって来たかのようです。この世界でいつ2人目のハニュウが誕生するのかわかりません。チェンはテクニックと安定感が驚異的でした。ですから、イリヤの方が彼らよりも才能豊かだと言うことはできません。彼らはオリンピックと世界選手権のメダルを持っていますが、私たちは道を歩み始めたばかりです。

 それに、フィギュアスケートにはジャンプだけでなく滑りそのものや、スピンや、振り付けなどもあることを忘れてはいけません。これらの点ではライバル選手たちも非常に強力です。

- 2人目のハニュウがいつ誕生するのかわからないとのことですが…マリニンこそ、それになれるのでは?

 マリニンは2人目の羽生になることはできません。ハニュウはこれまでも、今も、これからも唯一無二ですから。ユヅルが出場者リストに載れば、チケットが音速で売り切れます。

- マリニンはハニュウのようにスタジアムをいっぱいにできますか?

 健康であれば、非常に充実した未来が待っているでしょう。イリヤはハニュウのようにスタジアムをいっぱいにするに違いありません。

- あなたはプルシェンコとマリニンのことを、だいたい同じ年齢の頃からご存じですね。若き日のプルシェンコと今のマリニンは似ていますか?

 とても似ています。同じくらい野心的で、軽やかで、フレッシュで。両目には未来の勝利の炎が燃えています。16~17歳というのは、良い時期です。

- 初めてマリニン見たとき、「これはジェーニャ・プルシェンコだ、そっくりそのままじゃないか?!」と思いませんでしたか。

 そう思ったとは言えませんね。その時と今は違います。このさき何が起こるか見てみましょう。

 (つづく)



<原文>
Русская фамилия не помешает Малинину стать героем США». Закарян – о новом суперталанте фигурного катания
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