レヴィト<ロシア語をたくさん知っている>
2022年12月13日
マイヤ・バグリャンツェワ
「馬がリンゴを食べる」とか「女の子が卵を食べる」とか。
(略)
レヴィトは実際にロシアと強く結びついている。ユリア・クズネツォワとヴャチェスラフ・クズネツォフに師事し、チャイコフスキーとエフゲニー・ドガの曲をプログラムに選び、エフゲニア・メドベージェワとエリザヴェータ・トゥクタミシェワに憧れている。
(略:学校の勉強について)
― あなたのコーチは全員ロシア出身ですが、ロシア語の方はどうですか?
レヴィト:2~3年前にロシア語を勉強しはじめました。でも、外国語を2つ同時にやるのは無理だとわかりました。母がイタリア人なので、家族の半分がイタリア語を話すんです。ところが私のイタリア語は理想的にはほど遠くて。ぜんぶ聞き取れるのですが、ボキャブラリーが足りないのでちゃんと答えることができません。これは家族の名誉の問題なんですよ(笑)。だから1年後ぐらいにイタリア語をマスターしてから、またロシア語をやります。
今はまだ勉強と練習の合間に一息つくこともできないし、それに外国語もあります。でも、ロシア語はけっこう進歩してるんですよ。Duolingo(編集注:オンライン外国語学習サイト)によると、私はロシア語コースの単語のうち25%をマスターしています。
― 練習中に何かロシア語で言えますか?
クズネツォワ:イザボーは「ダバイ、ダバイ」「ハラショー」「マラジェッツ」を知っています。
レヴィト(割り込んで):もっと知ってるのに、もう! ほら、例えば(ロシア語で)「馬がリンゴを食べる」「女の子が卵を食べる」。だから、もしロシアで迷子になっても何とかなります。(ロシア語で)「私は水がほしい」「私は疲れた」「私は眠い」「私は横になりたい」。それにリンゴと卵。だから何とか生き延びられます。
― ロシアへ行ったことはないのですか?
クズネツォワ:それは簡単なことじゃありません。イザボーにはビザが必要です。2年前に行く予定でしたが、コロナ禍が始まってしまい、そして今度は、ほら…。私の親しい友人エフゲニー・ルカヴィツィンのグループで練習する計画でした。今ナスチャ・クバノワがそこで滑っています。計画は今のところ、残念ながら実現していません。
― イタリアへ行ったことはありますか?
レヴィト:はい、小さい頃に一度、それから去年の夏にも。イタリアは大好きです! めったに会えない家族に会えて、とてもいい旅になりました。試合と関係のない旅行はそのときがほとんど初めてでした。なのでゆっくり休んで満喫しました。
― それにイタリア料理ですね? どうでしたか?
レヴィト:大好きだし、気軽にいつでも食べられるのはイタリアンだけです。それに、実は、食べ物にはうるさい方で。だから、今年のグランプリ・ファイナルがトリノで開催されるのは2倍うれしいです。イタリアのおばあちゃんの期待を裏切ることなく、ファイナルに進出できました。言葉のわかる国へ行くのは素晴らしいです。感覚がぜんぜん違います。
(略:食べ物について)
― あなたは15歳です。間もなく女子選手の多くが成長の問題に直面します。思春期が怖いですか?
レヴィト:いいえ。自分のことに気を配って、何事もゆっくりやれば、つまりサンドイッチのバターは塊で出すのではなく薄く塗るようにすれば、大丈夫だと思っています。今の比喩、通じてますか? もちろん誰にもわからないことだけれど、今のところそれほど心配していません。遺伝的に運がよかったんだと思います。それから少しトレーニングを…
― でも、長い競技生活を送る心づもりはありますか? 例えばアリサ・リュウは「メダルを追いかけない」とあっさり宣言して、早々と引退してしまいました。
レヴィト:私は違います。じっと座って考えたりせずに「オーケー、あと何日か滑ろう」と思います。私の本格的なキャリアはまだ始まったばかりで、これからです。
― ロシアのコーチたちと仕事をするなかで、何か特別なものはありますか?
レヴィト:気にかけてもらえることがとても嬉しいです。コーチたちはすべてに注意を払っています。すべてを気にかけて、エモーショナルに反応して、100%の力を出しているのがわかります。私をすごくサポートしてくれるのが嬉しいです。いつもコーチたちの頼れる肩を感じています。
(ここでユリア・クズネツォワが、ロシアグランプリ・モスクワ大会でトゥクタミシェワが優勝したというニュースを読んだ)
クズネツォワ:優勝よ、優勝! ソフィア・アカチエワにも勝った! いいえ、ソーニャ(※ソフィアの愛称)は何の問題もないすごい選手。エテリは素晴らしい世界一のコーチ。でもこんな結果になるなんて! 私たち、リーザが勝って本当にうれしいです。言葉がありません。
― イザボー、ロシアの新しい女子たちを知っていますか? ライバルたちの動向を追っていますか?
レヴィト:変だと思われるかもしれませんが、ほとんど知りません。本当に時間が足りなくて。それに、こんなにたくさん選手がいるなんて! 自分がフィギュアスケートをほとんど見ていないことに気づかされました。私は好きな選手の演技だけ見ます。ネットフリックスのお気に入りのシリーズみたいに、何度も繰り返し見るんです。
― 3歳からフィギュアスケートを始めたのですよね。そのとき誰か女子選手にインスパイアされたのですか?
レヴィト:特には。最初に夢中になったのはエフゲニア・メドベージェワでした。たぶん私が10歳ぐらいのとき。リンクへ行って、母の携帯電話で演技を見たことを覚えています。
― オリンピックの銀メダルにがっかりしましたか?
レヴィト:はい、たぶん。最近、そのオリンピックの録画をもう一度見たんです。アリーナ・ザギトワはすべてを技術的に素晴らしく行いました。あの演技を見ると「うわー、なんて難しいことをしてるんだろう」とわかります。でも、私の心はいつもエフゲニアとともにありました。
― アリーナはそのとき15歳で、今のあなたと同い年なのに、それでもメドベージェワのストーリーの方が自分に近いと…
レヴィト:エフゲニアは、自分が何を滑っているのかを感じていました。登場人物たちが音楽によって浮かび上がり、彼らが氷の上で動くということです。言葉ではうまく言えませんが、あの演技のなかでメドベージェワの声が聞こえたんです。まるで彼女のいるリンクへ引き込まれたみたいでした。
感動的なのは、あのときエフゲニアが自分自身を振り絞って、プログラムのストーリーのことを忘れずにすべてのジャンプを跳んだことです。あれは完璧そのものでした。もちろん、理想に到達することは誰にもできないのですが。そういうわけで、彼女は私にとって本物のインスピレーションです。私もこんな風になりたい、なれるように頑張ろうと思いました。
クズネツォワ:彼女はフィギュアスケートのアイドルでありアイコンであり続けるでしょう。
レヴィト:数年前、母がエフゲニアと同じティッシュケースを買ってくれました。私がとても喜ぶとわかっていたんですよ。
(略:トレーニング、今シーズンの目標について)
― 教え子の何が特別なのか、コーチとして説明していただけますか? イザボーはなぜ勝てるのですか?
クズネツォワ:彼女はとても忍耐強く、本物のファイターで、内側に強い芯を持っていて、これは言葉では言い表せません。ちなみに気まぐれなところもありますが、もちろん、それは女の子ですから当然です。
― ふつう、コーチたちは逆のことを言います。この年齢の女の子は男の子よりも聞き分けがよく、問題が少ないと。
クズネツォワ:それはロシアの話でしょう。ロシアの女子は競争が激しいので、歯を食いしばって我慢できます。アメリカの女の子は少し違うし、練習の環境も違います。
たしかに、イザボーも疲れているときは不平を言ったり、何かに反対したりすることがあります。でも、そんなときは座って話をします。これは何のため?なぜあなたはここにいるの?って。彼女はとてもよく理解しているんですよ、フィギュアスケートが自分にとって人生の切符だということを。
彼女のお家はそれほど裕福ではなく、なんの保証もないので、将来のために稼がなくてはなりません。ですから、モチベーションを与えたり説得したりする必要はありません。今までどれだけのことをくぐりぬけてきたか、どれほど高くまでよじ登ってきたかを、ときどき思い出させてあげればいいだけです。大切なのはあきらめないこと。すべてを失ってしまうのは悔しい。そう、今は苦しいけれど、あとで楽になる。みんながあなたみたいに幸運というわけじゃないのよ、思い出して。
彼女はひとりではないし、リンクは第二の家みたいなものです。コーチたちは第二の両親と言えます。私は実の母親よりも彼女のことをよく知っているかもしれません。プログラム用の音楽もそうです。何が彼女に「はまる」か分かるんです。昨年、私は翌シーズンのフリープログラム用にロシア映画「私の甘くて優しい獣(Dulcea Si Tandra Mea Fiara)」のメロディーを持って行きました。すると彼女はすぐにくるくる回り始めて、目を輝かせて「うわあ、すごくいい曲、本当に私のために?どうもありがとう!」って。いいわ、気に入ったら、持って行ってね。
それと同時にイザボーは頭脳がとても大人で、のみ込みがはやくて、賢い子です。でも人生については、もちろんまだほとんど知りません。アメリカではロシアよりも成長が遅いようです。環境がロシアよりも温室的だからでしょう。リンクの送り迎えはママがしてくれるし、地下鉄で座席争いをする必要もないし、コーチが何でも面倒を見てくれるし。ええ、彼女はとてもよく練習していますよ。私はとても厳しいコーチですから、ロシアの伝統にしたがって、彼女から多くのものを期待しているんです。
(以下略)
<原文>
https://www.sports.ru/tribuna/blogs/vsemlutz/3096273.html